重症患者における筋萎縮に対するベルト型電極による骨格筋電気刺激の効果:無作為化比較試験
Kensuke Nakamura , Atsushi Kihata , Hiromu Naraba , Naoki Kanda , Yuji Takahashi , Tomohiro Sonoo , Hideki Hashimoto , Naoto Morimura . Efficacy of belt electrode skeletal muscle electrical stimulation on reducing the rate of muscle volume loss in critically ill patients: A randomized controlled trial.J Rehabil Med 2019; 51: 705-711.
PMID: 31544949 DOI: 10.2340/16501977-2594
No.2021-06
執筆担当:関西福祉科学大学 保健医療学部 リハビリテーション学科 梛野浩司
掲載:2021年3月11日
【論文の概要】
重篤なICU患者は重度の筋萎縮と筋機能の障害が生じる。これはICU関連筋力低下(ICU-AW)と呼ばれる。本研究はICUに入院した患者を対象にベルト型電極による骨格筋電気刺激(B-SES)による筋肉量への効果を検証した。ICUに入院した220名のうち基準を満たした94名を無作為にB-SES群とコントロール群に割り当てた。B-SESでは、通常リハビリテーションプログラム(可動域練習、モビライゼーションなど)に加えて、ベルト型電極を腰部、左右膝関節近位部、左右足関節近位部の計5箇所に巻き付け、周波数20Hz、パルス幅250μs、通電時間5秒、休止時間2秒にて電気刺激を1日1回20分間行った。コントロール群では通常リハビリテーションプログラムのみ行った。評価はCTにより大腿四頭筋筋量を測定しICU入院1日目と10日目とを比較した。その他、ICU入院期間、入院期間、人工呼吸器装着の有無、Barthel Indexを評価した。最終評価までを行うことができたのはB-SES群が21名、コントロール群17名であった。結果、両群共に筋のボリュームは有意に低下(p<0.0001)していたが、B-SES群の低下率はコントロール群より有意に少なかった(p=0.04)。退院時のBarthel IndexはB-SES群とコントロール群を比較した場合、階段昇降のみ有意な差を認めた(p=0.04)。B-SESによって血圧、不整脈などのイベントは生じなかった。
【解説】
ICU-AWの予防として数多くの研究がなされている。その中でも、栄養療法と早期リハビリテーションの組み合わせが有効であったとする報告がある1)。また、電気刺激による骨格筋量への影響についても複数の報告があるが、その効果については不明確である2-5)。
本研究ではベルト型電極を用いることで、単一筋だけでなく多くの筋群を刺激することが可能で、その結果、コントロール群に比べ筋量の減少率を抑えることができたことを示している。ただし、機能面での評価はBarthel Indexのみであることから筋機能の詳細な評価が行われていないことが気になるところである。また、本研究では副作用報告はなかったが、B-SESについての研究報告が少ないため臨床応用にはまだまだ慎重さが求められると思われる。
【引用・参考文献】
1) Kou K, Momosaki R, Miyazaki S, et al:Impact of Nutrition Therapy and Rehabilitation on Acute and Critical Illness:ASystematic Review. J UOEH 41: 303-315,2019
2) Gerovasili V, Stefanidis K, Vitzilaios K, et al. Electrical muscle stimulation preserves the muscle mass of critically ill patients: a randomized study. Crit Care. 13(5):R161. 2009
3) Meesen RL, Dendale P, Cuypers K, et al. Neuromuscular electrical stimulation as a possible means to prevent muscle tissue wasting in artificially ventilated and sedated patients in the intensive care unit: A pilot study. Neuromodulation. 13(4):315-20; 2010
4) Kho ME, Truong AD, Zanni JM,et al. Neuromuscular electrical stimulation in mechanically ventilated patients: a randomized, sham-controlled pilot trial with blinded outcome assessment. J Crit Care. 30(1):32-9, 2015
5) Poulsen JB, Møller K, Jensen CV, et al. Effect of transcutaneous electrical muscle stimulation on muscle volume in patients with septic shock. Crit Care Med. 39(3):456-61, 2011
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