一般社団法人
日本物理療法学会
Japanese Society forElectrophysical Agents inPhysical Therapy
超音波画像装置を用いた理学療法士の教育・研究機関及び臨床業務(評価)での使用実態に関するアンケート調査
このたび、(一社)日本基礎理学療法学会、(一社)日本運動器理学療法学会、(一社)日本物理療法学会、(一社)日本スポーツ理学療法学会の4法人学会が合同で、「超音波画像装置の理学療法士の教育機関及び臨床業務(評価)での使用実態に関するアンケート調査」を実施しましたのでご報告いたします。
⚫ 調査概要
1. 目的
本調査(アンケート)は、超音波画像装置の理学療法士養成校での教育上における使用実態及び臨床での使用実態を明らかにする目的でアンケート調査を実施した。
1. 調査期間
令和 5 年 5 月 29 日(月)~令和 5 年 6 月 23 日(金)
2. 調査対象
Ⅰ.教育機関(対象:理学療法学科責任者)
大学/短期大学 82 校/4 校
専門学校(3 年制)/専門学校(4 年制) 40 校/31 校
Ⅱ.臨床業務(対象:基礎・運動器の専門・認定理学療法士取得者)
基礎・運動器・スポーツ・物理療法の専門・認定理学療法士取得者が所属する臨床施設 2434 施設
3. 調査方法
日本理学療法士協会アンケートシステム(インターネット)
4. 回収状況
Ⅰ.教育機関:回収件数:157 件 有効回答率:59.0%
Ⅱ.臨床施設:回答件数:656 件 有効回答率:27.0%
6. 実施体制
本アンケートは、日本理学療法士協会のアンケートシステムを使用し(日本理学療法士協会はアンケートシステム利用のための共催)、日本基礎理学療法学会、日本運動器理学療法学会、日本物理療法学会、日本スポーツ理学療法学会による「理学療法士の超音波画像装置使用に関する合同委員会」が合同で実施した。

⚫ 調査結果の概要
※本調査にあたり、装置名を⼀般的な名称である「超音波画像診断装置」と表記して実施したが、理学療法士が使用する際の目的は「診断」ではないことを明確にするため、報告書においては「超音波画像装置」と統⼀して記載することとした。
1. 超音波画像装置の理学療法士の教育機関における使用実態
1) 超音波画像装置を用いた「教育」について
・設置状況:69%の教育機関で超音波画像装置が設置されていた。
・授業の実施:78%の施設で超音波画像装置を用いた授業を実施していた。主な授業内容は卒業研究
(33%)、運動療法学(14%)、運動学(11%)であった。
・教育の必要性:卒前教育の必要性を認識する割合は 76%、卒後教育は 79%であった。
2) 超音波画像装置を用いた「研究」について
・学部生・大学院生・教員の研究:学部生の卒業研究において、過去 3 年間の超音波画像装置の使用
件数は 1~5 回が 48%、大学院生では 1~5 回が 44%、教員では 1~5 回が 48%であった。
・研究対象:健常者が 74%、患者が 15%であった。
・評価項目:筋厚、筋断面積、筋束長などの計測が 25%、筋・腱の動態評価が 17%であった。
・その他の自由記載:指定規則、コアカリキュラムへの対応、理学療法士が安心・安全に使用できる
環境整備、法的整備、厚労省や医師会などへの働きかけ、ガイドラインの作成、卒前・卒後教育の
整備などが挙げられた。
2. 超音波画像装置の理学療法士の臨床業務(評価)での使用実態
1) 超音波画像装置を用いた「臨床」について
・設置状況:超音波画像装置を所有する臨床施設は 80%、理学療法部門での設置率は 46%であった。
・理学療法士の使用率:65%の施設で理学療法士が超音波画像装置を使用していた。主な目的は、病
態把握(31%)、治療効果の評価(20%)であった。
・教育の必要性:74%が卒前・卒後教育の必要性を認識していた。
・法的問題の認識:臨床現場で理学療法士が超音波画像装置を使用することについて、問題なしが
74%、指摘されたことが無しは 91%、有りは 9%であった。
2) 臨床現場での超音波画像装置を用いた「研究」について
・研究実施施設:22%の施設で超音波画像装置を用いた研究を実施していた。
・対象:患者は 49%、健常若年者は 39%、健常高齢者は 10%であった。
・学会・論文発表:国際学会発表は 25%、国際論文発表は 12%であった。
・その他自由記載:超音波画像装置は評価や治療のエビデンスの構築に重要、コスト面や時間的制約
が課題、診療報酬への対応などが挙げられた。
⚫ まとめ
理学療法士の超音波画像装置の使用は、教育機関や臨床施設で広がっていた。教育では卒業研究などで活用され、卒前・卒後教育の必要性が認識されていた。臨床では病態把握や評価が主な目的であった。今後の課題として、ガイドライン作成、指定規則・コアカリキュラム、法的整備等への対応が挙げられた。
⚫ 今後
2023 年度より、日本基礎理学療法学会、日本運動器理学療法学会、日本物理療法学会、日本スポーツ
理学療法学会による「理学療法士の超音波画像装置の使用についての合同委員会」活動が開始されてい
る。今後は、本委員会により、他関連法人学会および有識者とともに審議し、超音波画像装置の使用に関するステートメントを策定し、理学療法領域における超音波画像装置の適正使用に関する規定整備、および教育方法の在り方に関する方針を示していく予定である。