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Systematic Review to Inform a World Health Organization (WHO) Clinical Practice Guideline: Benefits and Harms of Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation (TENS) for Chronic Primary Low Back Pain in Adults

Leslie Verville, Cesar A Hincapié, Danielle Southerst, Hainan Yu, André Bussières, Douglas P Gross, Paulo Pereira, Silvano Mior, Andrea C Tricco, Christine Cedraschi, Ginny Brunton , Margareta Nordin, Gaelan Connell, Heather M Shearer, Jessica J Wong, Léonie Hofstetter, Andrew Romanelli, Brett Guist, Daphne To, Kent Stuber, Sophia da Silva-Oolup, Maja Stupar, Danny Myrtos, Joyce G B Lee, Astrid DeSouza, Javier Muñoz Laguna, Kent Murnaghan, Carol Cancelliere

PMID: 37991646 PMCID: PMC10684422 DOI: 10.1007/s10926-023-10121-7

 

No.2024-06

執筆担当:医療法人富田会 富田病院 木村 文彦

掲載:2024年9月30日


【論文の概要】

成人の慢性原発性腰痛(CPLBP)に対する経皮的電気神経刺激(TENS)の有益性と有害性を評価し,世界保健機関(WHO)の臨床ガイドラインに反映させることを目的にシステマティックレビューを行った.結果,2007年7月1日から2022年3月9日までの記録のうち17のRCTが含まれ,89の全文RCTがスクリーニングされた.エビデンスによるとTENSはプラセボ/シャム(9件のRCT)と比較して,2週間において疼痛のわずかな減少をもたらし(平均差(MD)=-0.90,95%信頼区間-1.54~-0.26),3ヵ月において,TENSは介入なし,またはTENSに特異的な効果を有する介入(1件のRCT)と比較して,疼痛不快感を減少させることが示唆された(MD=-11.20、95%信頼区間-17.88~-3.52).その他のアウトカムについては,TENSと比較介入との間にほとんど差が認められなかった.すべてのアウトカムに関するエビデンスの確実性は非常に低かった.結論として,非常に確実性の低いエビデンスに基づくと,TENSはCPLBPを有する成人において,疼痛を短時間かつわずかに軽減し,疼痛不快感を短期的に軽減したが,他のアウトカムについてはほとんど差が認められなかった.


【解説】

腰痛は世界的に問題となっており,世界疼痛負担研究(GBD)2015において,生活に支障を及ぼす疾患の第1位とされている1).本論文は腰痛に対するTENSの有益性を示したものである.疼痛に対するTENSの効果については,2022年に行われた381件のRCTに対するシステマティックレビューにて,その実施中・直後で疼痛強度が低下し,重篤な有害事象の無いことを示す中程度の確実性のエビデンスが示されている2).腰痛に対してもTENSは,本邦の診療ガイドラインにおいて推奨度2(エビデンスの強さC)と位置づけされている3).また,近年の研究では,TENSと温熱療法を併用することで腰部の圧痛閾値が有意に上昇し,有益な効果を示したとする報告もされている4).この様にTENSは腰痛に対しても一定の効果を示す報告が多いが,未だエビデンスは限定的であり,今後も効果の解明に注目していきたい.


【引用・参考文献】

1)Institute for Health Metrics and Evaluation : Global Burden of Disease (GBD) <http://www.healthdata.org/gbd>

2)Mark I Johnson, Carole A Paley, Gareth Jones, Matthew R Mulvey, Priscilla G Wittkopf:Efficacy and safety of transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) for acute and chronic pain in adults: a systematic review and meta-analysis of 381 studies (the meta-TENS study). Affiliations expand PMID: 35144946 PMCID: PMC8845179 DOI: 10.1136/bmjopen-2021-051073

3) 腰痛診療ガイドライン2019 改訂版 page66

4) Lynn Leemans, Ömer Elma, Jo Nijs, Timothy H Wideman, Carolie Siffain, Hester den Bandt, Sven Van Laere, David Beckwée:Transcutaneous electrical nerve stimulation and heat to reduce pain in a chronic low back pain population: a randomized controlled clinical trial.Affiliations expand PMID: 32434666 PMCID: PMC7817858 DOI: 10.1016/j.bjpt.2020.04.001

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Extracorporeal Shockwave Treatment as Additional Therapy in Patients with Post-Stroke Spasticity of Upper Limb-A Narrative Review.

Starosta M, Marek K, Redlicka J, Miller E. J Clin Med. 2024 Mar 30;13(7):2017. doi: 10.3390/jcm13072017. PMID: 38610782; PMCID: PMC11012993.


No.2024-05

執筆担当: 岸和田リハビリテーション病院 嘉摩尻 伸

掲載:2024年8月30日


【論文の概要】

 脳卒中は中枢神経系の重篤な損傷であり,長期的な身体障害と死亡の主な原因のひとつとなる.神経疾患の主な症状のひとつに痙縮があり,過度の腱の痙攣を伴う速度に依存した緊張性伸張反射の亢進を特徴とし,伸張反射の過剰興奮をもたらす運動状態と定義されている.痙縮は25%が最初の6週間以内に発生し,脳卒中の発生率とともに拡大の発生率が増加する1).脳卒中後のリハビリテーションは,失われた技能を再学習し,自立を取り戻すことに重点を置いている.本レビューでは,痙縮を治療するための非侵襲的な選択肢としての体外衝撃波治療(ESWT)に関する現在のエビデンスに焦点を当て,上肢の痙縮を有する脳卒中後の患者に対するEWST介入の効果を調査した.最も頻繁に使用したストローク数は1000~3000ストロークの範囲で, 周波数 18 Hz ,エネルギーパルス0.03 ~0.93 mJ /mm 2だった.ESTW 療法は,脳卒中後の患者に筋緊張の改善,痙縮の軽減,手の機能と制御の改善,疼痛感覚の軽減,上肢運動機能の改善など良い効果をもたらす可能性を認めた.ESWTによる一過性の合併症には,発赤,しびれ,痛み,あざなどがある. しかし,ESWT 治療は安全で、長期的な副作用はなかった.従来の神経生理学的方法に基づく治療は依然として有用であるが,非侵襲性 ESWT は痙縮のある患者に適用できる有望な追加治療法となる可能性がある. 


【解説】

 体外衝撃波治療器には,集束型衝撃波(focused shock wave: FSW)と拡散型圧力波(radial pressure wave: RPW)がある.集束型は衝撃波を集束させて高いエネルギーを深部に到達することが可能であるのに対し,拡散型はハンドピース先端からエネルギーが放射状に伝播するため浅い領域でのみ有効である.ESWTの効果としては,即時的な除痛効果と遅発的な組織修復効果が確認されているが,その作用機序についてはいまだ十分に解明されていない.本論文では痙縮に対するEWSTの効果を調査している.過去にも脳卒中後の痙縮に対するESWTについてのメタアナリシスは報告されており,異質性は高いものの痙縮抑制効果が以前から示されている 2). ESWTによる痙縮抑制のメカニズムは明らかになっていないが,末梢組織に機械的刺激を加えることで一酸化窒素の生成を促すことで,筋または腱の新生血管の増加や,筋粘弾性の改善,組織修復の促進の関与が考えられている3) .また,抗炎症作用4)や,EWSTによって神経筋接合部のアセチルコリンが一時的に減少することで筋痙縮が軽減されることを研究で示唆している5,6)

 痙縮やスパズムに対しては薬物療法や手術療法,理学療法が用いられてきた.従来の理学療法では振動刺激や電気刺激療法などが使用されてきたが,EWSTも痙縮のある患者に適用できる有望な追加治療法となる可能性がある.


【引用・参考文献】

1) Wissel J, Manack A, Brainin M. Toward an epidemiology of poststroke spasticity. Neurology. 2013 Jan 15;80(3 Suppl 2):S13-9. doi: 10.1212/WNL.0b013e3182762448. PMID: 23319481.

2) Cabanas-Valdés R, Serra-Llobet P, Rodriguez-Rubio PR, López-de-Celis C, Llauró-Fores M, Calvo-Sanz J. The effectiveness of extracorporeal shock wave therapy for improving upper limb spasticity and functionality in stroke patients: a systematic review and meta-analysis. Clin Rehabil. 2020 Sep;34(9):1141-1156. doi: 10.1177/0269215520932196. Epub 2020 Jun 8. PMID: 32513019.

3) Yang E, Lew HL, Özçakar L, Wu CH. Recent Advances in the Treatment of Spasticity: Extracorporeal Shock Wave Therapy. J Clin Med. 2021 Oct 14;10(20):4723. doi: 10.3390/jcm10204723. PMID: 34682846; PMCID: PMC8539559.

4) Mariotto S, Cavalieri E, Amelio E, Ciampa AR, de Prati AC, Marlinghaus E, Russo S, Suzuki H. Extracorporeal shock waves: from lithotripsy to anti-inflammatory action by NO production. Nitric Oxide. 2005 Mar;12(2):89-96. doi: 10.1016/j.niox.2004.12.005. PMID: 15740982.

5) Kenmoku T, Nemoto N, Iwakura N, Ochiai N, Uchida K, Saisu T, Ohtori S, Nakagawa K, Sasho T, Takaso M. Extracorporeal shock wave treatment can selectively destroy end plates in neuromuscular junctions. Muscle Nerve. 2018 Mar;57(3):466-472. doi: 10.1002/mus.25754. Epub 2017 Aug 8. PMID: 28759703.

6) Jia G, Ma J, Wang S, Wu D, Tan B, Yin Y, Jia L, Cheng L. Long-term Effects of Extracorporeal Shock Wave Therapy on Poststroke Spasticity: A Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2020 Mar;29(3):104591. doi: 10.1016/j.jstrokecerebrovasdis.2019.104591. Epub 2019 Dec 31. PMID: 31899073.

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Ameliorating Effects of Transcutaneous Electrical Acustimulation Combined With Deep Breathing Training

Won Choi Suk, Su Jin Kim, Dong Sik Chang, and Ho Yun Lee

Neuromodulation 2019 Aug;22(6):751-757.

PMID: 31347247 PMCID: PMC6771489 DOI: 10.1111/ner.13021


No.2024-04

執筆担当: 福井 直樹 和歌山リハビリテーション専門職大学

掲載:2024年7月30日


【論文の概要】

胃食道逆流症とは、胃や十二指腸の内容物が食道へ逆流し、消化器症状や食道粘膜の傷害を引き起こす病気である。胸やけや逆流は胃食道逆流症が「典型的な」症状となっている。

中国では鍼灸治療が消化器疾患の治療に用いられており、胃食道逆流症を含む機能性ディスペプシアの治療も行われている。特に機能性ディスペプシアに対して、図三里と内関への鍼治療または電気鍼治療が吐き気、嘔吐、その他の腹部症状を効果的に緩和することを示す報告が多数ある(1)。図三里と内関での経皮電気刺激法は、胃食道逆流症、機能性ディスペプシア、術後回復期の患者の症状や運動性を改善できる(2)。経皮電気刺激法は迷走神経の活動を高め、交感神経の活動を抑制することにより、消化不良の症状を改善することが報告されている(1)。

深呼吸トレーニングは、副交感神経系の緊張を高めると考えられており、多くの心理療法、認知療法、代替療法で頻繁に用いられている。このような療法は、過敏性腸症候群のような慢性内臓痛症候群の治療において、エビデンスがある。自律神経系(ANS)の副交感神経が、コリン作動性抗炎症経路を通じて、抗過敏性効果を媒介する可能性を示唆するエビデンスが増えている。最近の研究では、深部吸気トレーニングが、胃食道逆流症に苦しむ患者の過敏性腸症候群に関連する腹痛の症状や食道知覚過敏の状況を著しく改善することが報告されている(3)。

これら経皮電気刺激法または深呼吸トレーニング単独で消化不良や胃食道逆流症の症状を改善することが報告されているが、2つの併用が胃食道逆流症または胃食道逆流症の治療において相乗効果をもたらすかどうかは不明であった。そこで、この研究では、胃食道逆流症患者において、経皮電気刺激法と深呼吸トレーニングの併用が胃食道逆流症症状や食道運動、自律神経機能に関連するメカニズムに対して相乗効果をもたらすかどうか検討した。

対象は標準的なプロトンポンプ阻害剤(PPI)治療に8〜12週間反応しない難治性胃食道逆流症患者21名(男性7名、女性14名)。介入は、経皮的電気刺激と深呼吸トレーニングの併用を行い、経脾的電気刺激は、図三里と内関の経穴に対して25 Hz、5 mAで30分間、1日2回の電気刺激を行い、深呼吸トレーニングはは腹式深呼吸を実施した。比較対は3グループに分けて行った。グループA:エソメプラゾールのみを服用。グループB:経皮電気刺激 + 深呼吸トレーニング + エソメプラゾールの併用。グループC:偽経皮電気刺激 + 深呼吸トレーニング + エソメプラゾールの併用。結果、グループBはグループCに比べて有意に低いRDQスコアとDeMeesterスコアを出し、下部食道括約筋圧が増加した(p < 0.05)。また自律神経機能はLF + HF比においてグループAと比較してグループBおよびCで減少し(p = 0.010, p = 0.042)、HF/(LF + HF)比はグループBおよびCで有意に増加した(p = 0.010, p = 0.042)。グループBおよびCの血清AchはグループAよりも有意に高く(p = 0.022, p = 0.046)、血清一酸化窒素は有意に低くなった(p = 0.010, p = 0.027)。


【解説】

この研究では、経皮電気刺激法と深呼吸トレーニングの併用により、下部食道括約筋圧が有意に増加し、酸の逆流が減少し、胃食道逆流症の臨床症状が改善されることを見いだした。経皮電気刺激法の併用療法は調査したパラメータのほぼすべての面で効果があった。逆流の改善は、自律神経および腸管メカニズムを介した下部食道括約筋圧の上昇に起因すると考えられる。

現在、多くの胃食道逆流症患者が、有効な治療法がないために逆流症状に悩まされているが、そのメカニズムは解明されていない(4-5)。逆流防止バリアの弱体化、腸管神経機能異常、自律神経機能異常が胃食道逆流症に大きく関与している可能性がある。Liuらは、機能性ディスペプシア患者において、図三里および内関の両方での経皮電気刺激法が、交感神経の活動を抑制し、迷走神経の緊張を高めることにより、膨満感の緩和と消化不良の改善に有効であることを明らかにしている(1)。また、深呼吸トレーニングは腹圧、食道胃接合部の機能、下部食道括約筋の圧を改善することが報告されている.深部吸気は主に横隔膜の収縮と弛緩で構成され、特に横隔膜の下降ドームは下部食道括約筋の圧力を強化する。この研究データもこの効果を支持するものとなった。

経皮電気刺激法と深呼吸トレーニングの併用は、自律神経および腸管メカニズムを介した下部食道括約筋圧の増加によって、胃食道逆流症患者の逆流を効果的に緩和する可能性があると思われる。


【引用・参考文献】

1.Liu S, Peng S, Hou X, Ke M, Chen J. Transcutaneous electroacupuncture improves dyspeptic symptoms and increases high frequency heart rate variability in patients with functional dyspepsia. Neurogastroenterol Motil 2010;20:1204–1211.

2.Zhang B, Xu F, Hu P et al. Needleless transcutaneous electrical acustimulation: a pilot study evaluating improvement in post‐operative recovery. Am J Gastroenterol 2018;113:1026–1035.

3.Botha C, Farmer AD, Nilsson M et al. Preliminary report: modulation of parasympathetic nervous system tone influences oesophageal pain hypersensitivity. Gut 2015;64:611–617.

4.Xiao Y, Liang M, Peng S, Zhang N, Chen M. Tailored therapy for the refractory GERD patients by combined multichannel intraluminal impedance‐pH monitoring. J Gastroenterol Hepatol 2016;31:350–354.

5.Kahrilas PJ, Keefer L, Pandolfino JE. Patients with refractory reflux symptoms: what do they have and how should they be managed? Neurogastroenterol Motil 2015;27:1195–1201.

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