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The Effects of Chronic Cold Water Immersion in Elite Rugby Players

 

Francisco Tavares,Martyn Beaven,Julia Teles,Dane Baker,Phil Healey,TiakiB Smith and Matthew Driller

International Journal of sports Physiology and performance 2018

PMID:29952675 DOI:10.1123/ijspp.2018-0313

 

No.2024-02

執筆担当 香里園とみた整形外科リウマチクリニック 河西紀秀

掲載:2024年1月31日

 

【論文の概要】

冷水浸漬(cold water immersion;CWI)の急性効果は広く研究されているが、トレーニング中のアスリートにおける慢性的な疲労に対しCWIの効果を分析した研究は少ない。この論文では、エリートラグビー選手を対象に、3週間の激しいプレシーズン期間中におけるCWIの効果について調査し検証している。

方法は23名のラグビー男子エリート選手を、3週間のトレーニング中にCWI(10℃で10分間、n=10)またCWIを施行しないコントロール群(CON、n=13)のいずれかに無作為に分けられた。選手は、各トレーニング(合計12日間)の後にCWIまたはCONに分け、ランニング負荷、コンディショニング、ジムでのセッションなどはグループ間で同様に実施された。

反復ジャンプなど筋肉痛が自覚された段階にてコルチゾールとインターロイキン-6(IL-6)を唾液サンプルから週1回、採取し計測を行った。結果、CWIとCONの間に有意差は認められなかったが、CWIは筋肉痛(d=0.58~0.91)及びインターロイキン-6(d=0.91)に対する中等度の効果と、反復ジャンプに対する小さな効果(d=0.23~0.91)を認めた。研究全体を通して疲労マーカーの低下をもたらす結果となった。CWIはエリートラグビー選手の3週間の集中トレーニング段階での疲労や痛みの軽減を認めたことにより、いくつかの有益な効果をもたらす可能性が期待できることがわかった。

 

【解説】

この研究では、ラグビーのトレーニング期間中における疲労の増大に際し、早期の疲労回復を図るため、数あるリカバリー戦略の中で冷水法を用いている1,2)。

 CWIにおける生体への反応としては皮膚温、体温、筋温を低下させ、血管収縮をもたらし、その結果、筋損傷による腫脹や急性炎症を軽減させる可能性がある3,4)。

さらに、CWIの使用は神経伝導速度の低下と同時に筋スパズムや疼痛緩和が期待できる。

スポーツ現場で限られたトレーニングセッション間に疲労回復を図る手段として、CWIの実施を検討することは神経筋パフォーマンスの回復を早めることが期待できる有効な方法と考える。本研究では、残念ながらサンプルサイズが小さいことが挙げられ、各競技へ応用する場合、先行研究も含めCWIを用いたリカバリー調査を参考に適応を考えていく必要があると考える。

 

【引用・参考文献】

1) Tavares F,Heady P,Smith TB,Driller M.The usage and perceived effectivness of different recovery modalities in amateur and elite Rugby athletes.Perform Enhanc Heal.

2017;5(4):142-146.doi:10.1016/j.peh.2017.04.002.

2) Tavares F,Smith TB,Driller M.Fatigue and Recovery in Rugby:AReview.Sport Med.

2017;47(8).Doi:10.1007/s40279-017-0679-1.

3) WhiteGe,WellsGD.Cold-water immersion and other forms of cryotherapy:physiological changes potentially affecting recovery from high-intensity exercise.Extrem Physiol Med.2013;2(1):26.doi:10.1186/2046-7648-2-26.

4) Wilcock I,Cronin J,Hing W.Physiological response to water immersion.Sport Med.2006;36(9):747-767.doi:10.2165/00007256-200636090-00003.

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Effects of neuromuscular electrical stimulation on glycemic control: a systematic review and meta-analysis

Michael J Sanchez, Ali Mossayebi , Solmaz Sigaroodi, Jehu N Apaflo, Michelle J Galvan , Kisuk Min, Francisco J Agullo, Amy Wagler, Sudip Bajpeyi

PMID: 37583429 PMCID: PMC10424918 DOI: 10.3389/fendo.2023.1222532

 

No.2024-01

執筆担当:医療法人富田会 富田病院 木村 文彦

掲載:2024年1月4日

 

【論文の概要】

神経筋電気刺激(NMES)は筋収縮を誘発する効果的な方法であり、特に身体障害や代謝性疾患を有する患者に有効とされるが、血糖コントロールの改善に対する有効性は不明である。本研究は血糖コントロールに対するNMESの有効性を明らかにすることを目的にシステマティックレビューを行った。結果、35の研究がシステマティックレビューの包括基準を満たし、そのうち9研究がメタ解析の対象となった。既存のエビデンスでは、NMESが主に2型糖尿病、肥満、脊髄損傷等の中高年患者において血糖コントロールを効果的に改善することが示唆されていた。メタアナリシスは180人の参加者から構成され、NMES介入により空腹時血糖が低下したことが報告されている。各研究で報告された主要指標(OGTT,HOMA-IR,空腹時血糖)を用いた追加解析でも、血糖コントロール改善に対するNMESの有意な効果が確認された。しかし、プロトコールは研究によって異なっており、今後は標準化が必要である。本研究によってNMESは、身体障害および代謝障害を有する 患者における血糖コントロールを改善する治療戦略として考慮される可能性が示された。


【解説】

本論文はNMESによる血糖コントロールの有用性を示したものである。糖尿病に対する運動療法は血糖コントロール等に有効とされており高齢者糖尿病診療ガイドライン2023においても、強く推奨されている1)。(推奨グレードA)しかし、臨床場面において運動療法が困難な例も多く代替手段としてNMESが広く用いられている。本邦でもその効果検証として、基礎的研究においてNMESによる筋肉の糖取り込み促進作用2)や、食後高血糖を抑制する効果3)などが報告されている。また、近年ではⅠ型糖尿病に対しての血糖降下作用の報告もされており4 )、今後も臨床活用すると共に、その効果検証についても注目していきたい。


【引用・参考文献】

1)高齢者糖尿病診療ガイドライン2023 page129

2)Hamada T,Sakaki H,Hayashi T,Moritani T, and Nakao K: Enhancement of whole body glucose uptake during and after human skeletal muscle low-frequency electrical stimulation. J Appl Physiol 94:2107-2112,2003

3)Miyamoto T,Fukuda K,Kimura T,Matsubara Y,tsuda K, and Moritani T: Effect of percutaneous electrical muscle stimulation on postprandial hyperglycemia in type 2 diabetes.Diabetes ResClin Pract 96: 306-312,2012

4)Fatemeh Fallah, Morteza Alijanpour, Soraya Khafri, Mohammad Pournasrollah & Ghadam Ali Talebi.The effect of neuromuscular electrical stimulation on serum glucose levels in children and adolescents with type-1 diabetes mellitus: a single group clinical trial.BMC Endocrine Disorders volume 22, Article number: 246 (2022)

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Characteristics of Stimulus Intensity in Transcutaneous Vagus Nerve Stimulation for Chronic Tinnitus.

Won Choi Suk, Su Jin Kim, Dong Sik Chang, and Ho Yun Lee

J Int Adv Otol. 2018 Aug; 14(2): 267–272.

PMCID: PMC6354472. doi: 10.5152/iao.2018.3977


No.2023-09

執筆担当: 福井 直樹 和歌山リハビリテーション専門職大学

掲載:2023年11月30日


【論文の概要】

迷走神経は心臓、肺、消化器官への副交感神経支配、嚥下や発声などの分枝運動機能、体性感覚や内臓感覚など、全身のさまざまな機能の制御に関与している。頸部迷走神経刺激(VNS)は、難治性てんかんやうつ病の治療薬として米国で承認されている。その作用機序は網様体賦活系、中枢自律神経ネットワーク、大脳辺縁系、びまん性ノルアドレナリン作動性投射系の活動の変化が考えられている。近年、迷走神経耳介枝(ABVN)の非侵襲的経皮的VNS(tVNS)が注目され、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)スキャンにより、tVNS後に大脳辺縁系(扁桃体、海馬、海馬傍回)の不活化が観察されている。この所見は、頸部VNSを調査した研究と同様であった。

耳鳴りは、外的要因のない音響知覚を指し、tVNSとクラシック音楽の併用によって効果を示す予備的研究が行われている。他の研究で刺激強度の異なる基準が使用されているが、刺激部位の最適な位置については研究されていない。当研究は、「各部位において、痛みを感じることなく耐えられる最大感覚閾値が、耳鳴りの特徴に関連し、治療成績に影響する」という仮説を立て、前向き観察研究を行っている。

対象は3ヵ月以上持続する片側性・非拍動性・自覚的耳鳴りを訴える24名の患者。tVNSは経皮的電気神経刺激装置を用い、パルス幅200μs・周波数30Hz・刺激部位は順番にcavum, cymba, tragusの表面とし、4分間刺激している。評価は耳鳴りの苦痛をTinnitus Handicap Inventory(THI)、Beck Depression Inventory(BDI)、耳鳴りの大きさ、自覚度、煩わしさ、生活への影響を視覚的アナログスケール(VAS)を用いて評価した。統計分析は治療後のVAS、THI、BDI得点の変化は、Wilcoxon符号順位検定を用いて比較した。刺激強度とVASの相関は、スピアマン相関分析を用いて評価した。また反復測定分散分析(ANOVA)を用いて、経時的な各刺激部位における刺激強度の差を評価した。結果、tragusの平均最大感覚閾値は5.79 mAであり、これはcymba(4.98 mA)やcavum(5.1 mA)よりも高い傾向にあった。治療後の耳鳴りの苦痛を示すVASスコアはすべて改善した(p<0.05)


【解説】

慢性耳鳴りの治療に対するtVNSの実行可能性を探るために各部位ごとにtVNSの刺激強度の効果を評価した研究である。当研究では、多くの先行研究で見落とされがちであった刺激強度が治療成績に及ぼす影響を検討し、最適な刺激部位と強度を同定している。初期VASスコアと刺激強度の間には正の相関が存在するものの、刺激強度が治療成績に及ぼす影響は限定的であると思われる。他の研究では、tVNSの治療効果の根底にあるメカニズムについて、孤束核NTS、青斑核(LC)のノルアドレナリン作動性およびセロトニン作動性の相互作用に由来するのではないかという仮説を提唱している(1)。また他の研究では、健常者の4つの刺激部位-内耳道、外耳道内側壁、蝸牛、耳小葉-を比較し、最適なtVNS部位を確認している(2)。当研究では反応者はセッション間で刺激強度の変化を示し、初回の刺激強度がVASスコアと最も相関することを発見しているが、複数回のセッション後には相関は観察されなかった。初回の相関は、tVNSの治療効果を支持する証拠となるか、主観的な耳鳴りの苦痛に比例した改善に対する患者の期待(プラセボ)を反映している可能性がある。複数回のセッション後の相関に関しては、tVNSの反復による電気刺激耐性が起こった可能性が考えられる(3) 。


【引用・参考文献】

1). Lehtimäki J, Hyvärinen P, Ylikoski M, Bergholm M, Mäkelä JP, Aarnisalo A, et al. Transcutaneous vagus nerve stimulation in tinnitus: a pilot study. Acta Otolaryngol. 2012;133:378–82.

2). Yakunina N, Kim SS, Nam EC. Optimization of transcutaneous vagus erve stimulation using functional MRI. Neuromodulation. 2017;20:290–300.

3). Chandran P, Sluka KA. Development of opioid tolerance with repeated transcutaneous electrical nerve stimulation administration. Pain. 2003;102:195–201.

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