検索

末梢動脈疾患に対する温熱療法と運動療法の比較:12週間の無作為比較試験


Heat therapy vs. supervised exercise therapy for peripheral arterial disease: a 12-wk randomized, controlled trial

Ashley P Akerman , Kate N Thomas , Andre M van Rij , E Dianne Body , Mesfer Alfadhel , James D Cotter

Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2019 316: H1495-H1506

PMID: 31002283 DOI: 10.1152/ajpheart.00151.2019


No.2021-27

執筆担当: 関西福祉科学大学 植村 弥希子

掲載:2021年10月28日


【論文の概要】

末梢動脈疾患(PAD)は血管の狭窄、閉塞により生じ、進行すると四肢の切断に至る可能性もある。運動療法は治療手段の1つであるが、十分に運動が行えない患者も多い。足浴による温熱療法はPAD患者の歩行距離を改善するなど近年着目されているため、本研究では運動療法との効果を比較検討した。PAD患者を無作為に温熱群と運動群に分け、温熱群では週3~5日間の温熱療法を行った。約39度の温泉に剣状突起から肩の範囲で入浴し、入浴後15~30分後にバンドを用いた運動を行った(運動は週3回)。運動群では週2日間、30分間の歩行練習と最大60分以下で抵抗運動を行った。いずれの群も介入前と比べ6分間歩行の創歩行距離および間欠性跛行が出現するまでの距離(PFWD)は増加した。収縮期血圧は温熱群で有意に低下し、HRも上昇したが拡張期血圧および平均同脈圧に差は認めなかった。血液中のVEGF(血管内皮増殖因子)はいずれの群も介入後に上昇していた。また、QOLについて痛みの項目は温熱群で低下を認め、温熱群ではアドヒアランスも良好であった。


【解説】

PADは心血管障害のリスク因子であり、死亡のリスク因子であること、生命予後不良因子であることが報告されている1)。PADに対する足浴・全身浴により歩行時間が延長したという報告2)もあり、副作用が少なく治療の受け入れも良好であると注目されている。本研究では運動療法と温熱療法の比較としているが、温熱群でも運動は行われており純粋な温熱療法の効果とは言い難いが、温熱群では脱落者がいないことから温熱療法によって運動に対する受け入れも向上した可能性はある。PAD患者は足部の変形や胼胝が生じやすく、また、間欠性跛行があると歩行練習も十分に実施できないこともある。温熱療法と低負荷の運動療法の併用により運動耐容能が上昇するのであれば、今後の新たな治療戦略の1つとして用いられる可能性がある。一方で温熱療法後に血圧低下がみられる。循環動態の不安定な者では失神などのリスクも考慮する必要があるため、患者選択は十分に注意する必要があると思われる。


【引用・参考文献】

1) Ankle Brachial Index Collaboration. Ankle brachial index combined with Framingham Risk Score to predict cardiovascular events and mortality: a meta-analysis. JAMA,, 2008;300(2):197-208.

2) Monroe JC., Song Q., et al. Acute effects of leg heat therapy on walking performance and cardiovascular and inflammatory responses to exercise in patients with peripheral artery disease: Physiol Rep. 2021;8(24):e14650.

8回の閲覧0件のコメント

脳卒中後の上肢痙縮の治療における体外衝撃波とA型ボツリヌス毒素との比較。無作為化非劣性試験

Yah-Ting Wu , Hui-Kung Yu , Li-Ru Chen , Chih-Ning Chang , Yi-Min Chen , Gwo-Chi Hu . Extracorporeal Shock Waves Versus Botulinum Toxin Type A in the Treatment of Poststroke Upper Limb Spasticity: A Randomized Noninferiority Trial. Arch Phys Med Rehabil. 2018 Nov;99(11):2143-2150.

PMID: 30392753 DOI: 10.1016/j.apmr.2018.05.035


No.2021-26

執筆担当: 和歌山国際厚生学院 福井 直樹

掲載:2021年10月15日


【論文の概要】

片麻痺性肩痛(HSP)は脳卒中後の最も一般的な問題の1つであり、有病率は34〜84%、回復を阻害し、生活の質を低下させる可能性がある。また1つの病理だけでは、脳卒中後の肩の痛みを説明できず、一般にHSPの原因は、肩の亜脱臼、腱板損傷、癒着性関節包炎、CRPSなどであると考えられている。従来の集中型ESWTと比較して、拡散型体外衝撃波療法(rESWT)は、標的領域に衝撃波を集中させない。本研究の目的は、脳卒中後のHSP に対するrESWTの有益な効果を調査することである。方法、肩甲下筋と棘上筋の付着部位へのrESWTはHSP症状の軽減に効果的であるため、大結節と小結節で8セッション実施した。刺激は部位ごとに1,500パルスの合計3,000パルスとし、周波数12 Hz、刺激強度は0.39から1.95mJ/mm 2 1.0および5.0 barの間で、局所麻酔なしで患者が許容できるレベルとした。Sham刺激はCDプレーヤーで同じ音を出した。評価はMain outcomeをVAS、Constant murley score(100point)、Secondary outcomeをMAS、ROM、FMA上肢とした。結果、VASスコアは、介入群のベースラインと比較して、介入後および2週間および4週間のフォローアップで有意に改善した。対照群も、VASスコアは介入後有意に改善した。介入群と対照群のベースラインと介入後・2週間のフォローアップ・4週間のフォローアップの間にも有意差を認めた。


【解説】

本研究はHSP患者の痛みと機能に対するrESWTの効果に焦点を当てた最初のランダム化比較試験である。結果は、片麻痺の肩の肩甲下筋と棘上筋の挿入部位でのrESWTの8回のセッションが痛みを軽減し、その効果が少なくとも4週間続くことを示した。介入後の痛みの軽減量は、rESWTグループとコントロールグループでそれぞれ1.69と0.45であり、軽減量は患者の満足度としては小さい。しかし、4未満のVASスコアへの痛みの軽減がrESWTグループでのみ見られたことから臨床的意義はあると考えられる。HSPは、肩部のROMを制限し1)2)、原因として滑膜炎症および莢膜線維症の組み合わせに起因すると考えられている。3‐5)rESWTは、HSP患者の疼痛管理のための効果的かつ安全なモダリティの1つである可能性がある。


【引用・参考文献】

1) Kim KS, Seo JH, Song CG. Portable measurement system for the objective evaluation of the spasticity of hemiplegic patients based on the tonic stretch reflex threshold. Med Eng Phys. 2011;33:62–69.

2) Bohannon RW, Larkin PA, Smith MB, Horton MG. Shoulder pain in hemiplegia: statistical relationship with five variables. Arch Phys Med Rehabil. 1986;67:514–516.

3) Hsu JE, Anakwenze OA, Warrender WJ, Abboud JA. Current review of adhesive capsulitis. J Shoulder Elbow Surg. 2011;20:502–514.

4) Neviaser AS, Hannafin JA. Adhesive capsulitis: a review of current treatment. Am J Sports Med. 2010;38:2346–2356.

5) Neviaser AS, Neviaser RJ. Adhesive capsulitis of the shoulder. J Am Acad Orthop Surg. 2011;19:536–542.

19回の閲覧0件のコメント

黄色ブドウ球菌のバイオフィルムに対するヘマトポルフィリンモノメチルエーテル(HMME)を介した低周波・低強度超音波の透過効果


The penetration effect of HMME-mediated low-frequency and low-intensity ultrasound against the Staphylococcus aureus bacterial biofilm

Tao Wang , Wei Ma , Zhinan Jiang , Liangjia Bi

Eur J Med Res. 2020 25:51.

PMID: 33092628 PMCID: PMC7583205 DOI: 10.1186/s40001-020-00452-z


No.2021-25

執筆担当: 関西福祉科学大学 植村 弥希子

掲載:2021年10月4日


【論文の概要】

バイオフィルムは細胞外多糖(EPS)により抗生物質などの外的物質からの抵抗力が高まっており、薬剤による治療が困難である。高強度の超音波はESPを破壊し、バイオフィルムを除去することができる。位峰で低強度の超音波は薬剤と併用することで殺菌効果を増強させる。そこでバイオフィルムに対するヘマトポルフィリンモノメチルエーテル(HMME、光線力学療法に用いられる薬物)との併用効果を検証した。control、HMME単独投与、超音波(25kHz、0.5, 1, 1.5W/cm2、duty cycle 50%)との併用の3群にわけ検討した。結果、1.5W/cm2の超音波でバイオフィルムの破壊が確認された。また、0.5W/cm2と比べ1W/cm2の方が照射開始0.5分後よりHMMEの浸透作用が高かった。また、HMMEと超音波同時投与群ではHMMEの浸透率が高く、より高い濃度を投与できることが明らかになった。


【解説】

バイオフィルム前述した通り、抗生物質などの薬剤治療に抵抗性があり慢性潰瘍では治癒遷延化の一因としてあげられている。近年ではバイオフィルムを可視化させるキットも開発されているが、日本褥瘡学会褥瘡予防・管理ガイドライン1)でもバイオフィルムに対する外用薬は推奨度C1と推奨度は高くない。そこでバイオフィルムを物理的に除去する方法として超音波がフォーカスを浴びており、バイオフィルムの存在が疑われる褥瘡に対して超音波でブリードマンを行った結果、治癒が促進したという報告もある2)。本研究はデブリードマンによる破壊ではなく、超音波のキャビテーション効果を利用した薬剤導入によるバイオフィルムの破壊効果を検証しており、新たな知見が得られたといえる。今後、動物実験等での治癒効果の検証が必要であるが、安全で効果的な薬剤導入方法の確立が期待される。


【引用・参考文献】

1) 日本褥瘡学会、褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)、2015.

2) Mori Y., Nakagami G., Kitamura A, et al. Effectiveness of biofilm-based wound care system on wound healing in chronic wounds. Wound Repair Regen., 2019;27 (5):540-547.

24回の閲覧0件のコメント