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低出力レーザーの変形性膝関節症における痛みと能力障害への効果:システマティックレビューおよびメタ分析


Efficacy of low-level laser therapy on pain and disability in knee osteoarthritis: systematic review and meta-analysis of randomised placebo-controlled trials

Martin Bjørn Stausholm, Ingvill Fjell Naterstad, Jon Joensen, Rodrigo Álvaro Brandão Lopes-Martins, Humaira Sæbø, Hans Lund, Kjartan Vibe Fersum, Jan Magnus Bjordal

BMJ Open 2019;9:e031142. doi:10.1136/bmjopen-2019-031142

PMID: 31662383 PMCID: PMC6830679 DOI: 10.1136/bmjopen-2019-031142


No.2021-14

執筆担当:関西福祉科学大学 保健医療学部 リハビリテーション学科 梛野浩司

掲載:2021年5月11日


【論文の概要】

変形性膝関節症(Knee Osteoarthritis: KOA)に対する主要なガイドラインには低出力レーザー(low level LASER: LLLT)が含まれていない。これは、過去のシステマティックレビューが原因と考えられるが、このレビューでは世界レーザー療法学会(World Association for LASER Therapy: WALT)が提唱する治療容量に準拠していない論文も含めてレビューされていたためと考えられる。そこで、本論文ではKOAに対するLLLTの効果をWALTが提唱する容量を満たしている論文とそうでない論文とに分類し、その効果についてメタ分析を行った。

結果、2735論文のうち基準を満たしていた22論文(n=1063)でメタ分析を行った。痛みについてはVASで標準化し、全体で検討すると治療終了時点でプラセボと比較して14.23mmのより大きい低下(95%CI 7.31-21.14mm)を認め、治療終了後1-12週のフォローアップにおいても15.92mmのより大きい低下(95%CI 6.47-25.37mm)を認めた。WALTが提唱する容量を満たしている論文と満たしていない論文に分けて分析した結果では、満たしていたものではプラセボと比較して18.71mmのより大きい低下(95%CI 9.42-27.99mm)を認め、1-12週のフォローアップでは23.23mmのより大きな低下(95%CI 10.60-35.86mm)を認めた。一方、満たしていないものとプラセボとの比較では、治療終了時点で6.34mmのより大きな低下(95%CI 1.26-11.41mm)であったが、1-12週のフォローアップでは有意な差は認められなかった。能力障害についても同じような結果が確認された。


【解説】

 本論文はthe Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses statement(PRISMA statement)1)に準拠して実施されておりバイアスの報告、論文内容の統合についても示されている。そうしたプロセスを経てメタ分析を行った結果、本論文はLLLTの照射量についてWALTが提唱している容量に準拠することでKOAの痛みを大きく低下させることができることを示唆している。しかし、本論文では痛みと能力障害についてのみであり、QOLについては分析されていないため今後の研究に期待したい。

WALTが提唱しているKOAに対するLLLTの容量は照射部位ないし照射面積では3-6、光エネルギーでは12Jとしており、最低でも1箇所4J以上としている2)。光エネルギー(J)は出力(W)×照射時間(s)で求めることができるがレーザー治療機器により用いられるレーザー光によってその波長が異なると、治療に必要な出力が異なることを忘れてはいけない。WALTは785-860nmの波長では1箇所について4-8J、904nmでは1-3J3)としている。様々な物理療法機器においても適切に使用することが重要であること意味しており興味深い。また、本論文では考察の中でそれぞれの研究論文ではパラメーターについては十分示されているが、その機器がキャリブレーションされたかどうかについては述べられていないことを問題として提起している。


【引用・参考文献】

1) Moher D, Liberati A, Tetzlaff J, et al. Preferred reporting items for systematic reviews and meta-analyses: the PRISMA statement. PloS Med 2009;6:e1000097.

2) WALT. Recommended treatment doses for low level laser therapy 780-860 nm wavelength: world association for laser therapy, 2010. Available: http:// waltza. co. za/ wp- content/ uploads/ 2012/ 08/ Dose_table_ 780- 860nm_ for_ Low_ Level_ Laser_ Therapy_ WALT- 2010. pdf

3) WALT. Recommended treatment doses for low level laser therapy 904 nm wavelength: world association for laser therapy, 2010. Available: http:// waltza. co. za/ wp- content/ uploads/ 2012/ 08/ Dose_table_ 904nm_ for_ Low_ Level_ Laser_ Therapy_ WALT- 2010. pdf


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膝蓋腱炎に対する遠心性トレーニングと衝撃波治療の併用効果:二重盲検ランダム化比較試験


Karin M Thijs , Johannes Zwerver, Frank J G Backx, Victor Steeneken, Stephan Rayer, Petra Groenenboom, Maarten H Moen . Effectiveness of Shockwave Treatment Combined With Eccentric Training for Patellar Tendinopathy: A Double-Blinded Randomized Study. Clin J Sport Med. 2017 Mar; 27(2): 89-96.

PMID: 27347857 DOI: 10.1097/JSM.0000000000000332


No.2021-13

執筆担当: 県立広島大学  岡村 和典

掲載:2021年5月1日


【論文の概要】

 膝蓋腱炎は、膝蓋腱付着部の痛みとこれに伴う身体機能障害を主訴とするスポーツ障害である。膝蓋腱炎は膝伸展機構の過度な使用によって発症し、しばしば難治性であり慢性化する。近年、膝蓋腱炎の治療において、大腿四頭筋の遠心性トレーニングや体外衝撃波治療の有効性が報告されている。しかし、これらの治療方法を併用した場合の効果は十分に検証されていない。本研究では、膝蓋腱炎の診断を受けたレクリエーションレベルのアスリート52名をランダムに遠心性トレーニング+体外衝撃波治療群(ESWT群)と遠心性トレーニング+Sham体外衝撃波治療群(Sham ESWT群)に割当て、膝蓋腱炎に対する遠心性トレーニングと衝撃波治療の併用効果を検証した。遠心性トレーニングの治療プロトコルは、両群とも25°の傾斜台を用いた下降局面のみの片脚スクワットを、毎日15回×3セット×2回、これを12週間継続することとした。これに加え、ESWT群は収束型体外衝撃波治療(0.2mJ/mm2)を、Sham ESWT群は同様の機器を使用したSham衝撃波治療(0.03mJ/mm2)をいずれも1週間おきに3回実施した。なお治療期間中、疼痛がNRS4を超えない限りはスポーツ活動の実施が許可された。治療開始後6週、12週、24週の時点で質問紙(Victorian Institute of Sport Assessment-Patella:VISA-P)を用いて疼痛と活動レベルを評価した。VISA-Pの得点は0点(最大の痛みと活動制限)~100点(無痛と最大の活動)までであり、高い点数ほど症状が軽いことを意味する。24週時点の評価において、ESWT群のVISA-Pは54.5±15.4点から70.9±17.7点へ、Sham ESWT群のVISA-Pは58.9±14.6点から78.2±15.8点へとそれぞれ改善し、時間要因に主効果を認めた。また両群とも約70%の対象が症状の改善を報告した。一方、群要因(ESWT群 vs Sham ESWT群)に主効果は認められなかった。


【解説】

 膝蓋腱炎の治療として、大腿四頭筋の遠心性トレーニングが有効とされている1)。本研究は遠心性トレーニングに体外衝撃波治療を組み合わせることで、治療効果がさらに増すことを期待して行われたが、併用効果は認められなかった。膝蓋腱炎に対する衝撃波治療の効果について、VISA-Pスコアが比較的高い(軽症な)症例では効果が認めらにくい傾向がある2)。そのため、より重症な膝蓋腱炎症例を対象とした研究デザインで、衝撃波治療と遠心性トレーニングの併用効果を再度検証する必要があると考える。


【引用・参考文献】

1) Jonsson P, Alfredson H. Superior results with eccentric compared to concentric quadriceps training in patients with jumper's knee: a prospective randomised study. Br J Sports Med. 2005; 39(11): 847-50.

2) Mani-Babu S, Morrissey D, Waugh C, et al. The effectiveness of extracorporeal shock wave therapy in lower limb tendinopathy: a systematic review. Am J Sports Med. 2015; 43(3): 752-61.


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緩和ケアを受けている進行がん患者の身体症状に対する経皮的電気神経刺激の効果


Jiro Nakano , Koji Ishii , Takuya Fukushima , Shun Ishii , Kazumi Ueno , Emi Matsuura , Kaori Hashizume , Satoru Morishita , Koji Tanaka , Yoko Kusuba . Effects of transcutaneous electrical nerve stimulation on physical symptoms in advanced cancer patients receiving palliative care

International Journal of Rehabilitation Research 2020, 43:62–68

PMID: 32106174 DOI: 10.1097/MRR.0000000000000386


No.2021-12

執筆担当:医療法人社団三喜会 鶴巻温泉病院 大江健人

掲載:2021年4月27日


【論文の概要】

進行がん患者の抱える疼痛は、生活の質を著しく低下させる。中等度から重度のがん性疼痛に対する治療としてオピオイドが用いられるが、吐き気、嘔吐、便秘などのオピオイドの副作用によって、早期中止や鎮痛効果の不十分さにつながる可能性がある。本研究では、緩和ケアを受けている進行がん患者を対象に、痛みやその他の身体症状(疼痛、疲労、嘔吐、吐き気、不眠、食欲不振、身体的・情緒的機能)に対するTENSの効果を検討した。

緩和ケアを受けている進行がん患者20人を対象に、クロスオーバー試験にて、痛みやその他の身体的症状に対するTENSの効果が評価された。5日間のウォッシュアウト期間を挟んで5日間のフェーズで、患者はTENSまたは非TENSを受けた。TENSは、主に吐き気や呼吸困難に対しては背中の中央、痛みの起点と同じ皮膚上のレベルの背中(100Hz)、便秘に対しては両足関節(10Hz)の4点で行われ、強度は不快感のない最大強度にて理学療法士により1日1回、30分間行われた。

疼痛評価に関して、評価時の痛みの強さ、1日の平均的な痛みの強さの2点に加え、TENSフェーズの初日のみTENS直前(ベースライン)とTENS投与後0、60、120分にNRSにて測定した。また、カルテ上から血液データと、オピオイドレスキュー用量を使用した回数の合計を調べた。身体症状の評価には、European Organization for Research and Treatment (EORT) of Cancer Quality of Life Questionnaire-Core 15-Palliative Care (QLQ-C15-PAL)を用いた。

結果として、TENSにより、平均疼痛およびオピオイドレスキューの総投与回数が有意に減少した。TENSは、吐き気と食欲不振を改善する傾向があったが、便秘は改善しなかった。 血液学的、生化学的パラメーターには影響がなかった。


【解説】

本研究はパルス幅や総電荷量が不明であることや症例数が少ないことが課題であると思われるが、マルチチャンネルTENSを用い、平均疼痛およびオピオイドレスキューの総投与回数が有意に減少した事に加え、吐き気と食欲不振を改善する可能性を示唆したことを報告しており、臨床上で有益となる可能性がある。

がん性疼痛に対してTENSを用いた報告が増加しているが、その効果は明確にはなっていない1)。一方で近年は本研究のように、疼痛以外の症状に対するTENSの効果を検討した報告が増加してきている。また、癌性モデルラットへTENSを行うことで、エンドカンナビノイドシステムによって癌性疼痛の抑制が行える2)との報告もあり、これらの報告を踏まえるとがん患者に対するTENSは疼痛の軽減だけでなく吐き気や食欲の改善に有効な介入の一つとなる可能性がある。


【引用・参考文献】

1) Hurlow A, Bennett MI, Robb KA, Johnson MI, Simpson KH, Oxberry SG.

Transcutaneous electric nerve stimulation (TENS) for cancer pain in adults.

Cochrane Database of Systematic Reviews 2012, Issue 3. Art. No.: CD006276.

2) de Oliveira, Herick Ulisses, et al. Investigation of the Involvement of the Endocannabinoid System in TENS-Induced Antinociception. J. Pain Res. 21.7-8 ,2020: 820-835.

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