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糖尿病性末梢神経障害患者への足底電気刺激は立位バランスと足底感覚を改善させる:無作為化二重盲検比較試験試験


Bijan Najafi , Talal K Talal , Gurtej Singh Grewal , Robert Menzies , David G Armstrong , Lawrence A Lavery . Using Plantar Electrical Stimulation to Improve Postural Balance and Plantar Sensation Among Patients With Diabetic Peripheral Neuropathy: A Randomized Double Blinded Study. J Diabetes Sci Technol. 2017 Jul; 11(4): 693-701.

PMID: 28627217 PMCID: PMC5588835 DOI: 10.1177/1932296817695338

No.2021-11

執筆担当: 関西福祉科学大学 植村 弥希子

掲載:2021年4月23日



【論文の概要】

糖尿病性抹消神経障害(DPN)患者は足底感覚が低下しており転倒リスクが上昇する。電気刺激は感覚ニューロンの障害を改善すると報告されているため、DPN患者に対する電気刺激が立位バランスや足底感覚に与える影響を検討した。対象は中等度~重度の2型糖尿病DPN患者28名である。無作為に対照群、介入群に分け、介入群には足底刺激(30mA)を1日1時間計6週間実施した。なお、参加者は本研究において運動療法の介入は受けていない。足底感覚、閉脚時の重心移動(開眼/閉眼)、10m歩行のパラメーター(速度、歩幅、ケーデンス)を介入前後で測定した。結果、感覚閾値は有意に低下(95%CI: 4.9-17.7)、開眼時の前後の重心移動およびCoM(質量重心)は介入群で有意に改善がみられ(効果量:0.76, 0.67)、歩行パラメーターも有意な改善がみられた(効果量:0.41-1.35)。刺激による有害事象はなく、足関節上腕血圧比(ABI)が1.2以上の患者ではABIの改善がみられた(効果量:0.99)。


【解説】

TENSと運動療法の併用により脳卒中患者の下肢運動機能を改善させることはすでに知られている1), 2)。DPNは末梢神経障害であるため中枢神経障害と一概に比較できないが、TENSはDPN患者に対しても運動機能だけでなく感覚障害の改善効果を有する可能性を示唆した点で興味深い報告である。一方で、刺激パラメーターの記載が不十分である(周波数、パルス幅の記載なし)こと、キャリーオーバーが不明であること、サンプルサイズが小さいことなど問題点はある。臨床適用する際にはパラメーター設定には十分注意する必要があるが、運動療法との併用でさらなる効果を得られる可能性はある。DPN患者は筋力低下による足部の変形および感覚障害により下肢潰瘍を形成しやすく、感染が生じると最悪の場合下肢切断に至る。切断患者の3年生存率は50%未満であり、大腿切断では3年生存率が50%未満3)と切断は生命予後と大きな関りがある。そのため、運動機能の維持と感覚障害の改善はDPN患者にとって非常に重要であり、本研究はDPN患者に対し電気刺激療法がその一助となる可能性を示唆している。


【引用・参考文献】

1) Sharififar S, Shuster JJ, Bishop MD. Adding electrical stimulation during standard rehabilitation after stroke to improve motor function. A systematic review and meta-analysis. Ann Phys Rehabil. Med. 2018;61:339-44.

2) Yen HS, Chen WS, Jeng JS, et al. Standard early rehabilitation and lower limb transcutaneous nerve or neuromuscular electrical stimulation in acute stroke patients: a randomized controlled pilot study. Clin Rehabil. 2019;33:1344-54.

3) Lavery La, Hunt NA, Ndip A, et al. Impact of chronic kidney disease on survival after amputation in individuals with diabetes. 2010;33:1365-9.

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脳卒中に対するFESの長期的キャリーオーバーの神経的関連性

Marta Gandolla 、 Nick S Ward 、 Franco Molteni 、 Eleonora Guanziroli 、 Giancarlo Ferrigno 、 Alessandra Pedrocchi。 The Neural Correlates of Long-Term Carryover following Functional Electrical Stimulation for Stroke。 Neural Plast。 2016;2016:4192718。

PMID: 27073701 PMCID: PMC4814690 DOI: 10。1155/2016/4192718


No。2021-10

執筆担当: 和歌山国際厚生学院 福井 直樹

掲載:2021年4月16日


【論文の概要】

機能的電気刺激(FES)は、脳卒中のリハビリテーションで一般的に使用される補助療法であり、主に下垂足に対して使用され、装具なしで自発的に足を背屈させる能力を再学習させる。この現象は「キャリーオーバー効果」と呼ばれ、多くの研究で観察されている。効果のメカニズムは不明であるが、随意努力とFESの電気刺激との相互作用により、中枢神経系に神経可塑性の効果がもたらされるという仮説が立てられている。しかし、神経学的な患者のキャリーオーバーの有無の特徴は明らかにされていない。本研究はFES治療前、運動中、刺激中の脳活動(または相互作用)が、FES治療後の随意的な足関節背屈のキャリーオーバー効果の予測に価値があるか調査した。方法は脳卒中発症6ヶ月以上経過を対象とし、表面電極を腓骨神経に沿って配置したFESを用いて、歩行のスウィングフェーズ中にTAの収縮を誘発した。fMRIデータの分析した結果、患者間において、一次および二次体性感覚皮質、対側中心傍小葉、両側前頭皮質、帯状回、楔前部、および縁上回でタスク関連の活性化を示した。FES後のキャリーオーバーの患者では、対側補助運動野(SMA)は刺激および随意状態でより活発であり、同側M1は随意運動でより活動的であることが明らかとなった。


【解説】

本研究の結果から、キャリーオーバー効果に関与する重要な領域として、補助運動野(SMA)と角回(AG)が示された。SMAは運動の準備と計画に関連しており、慢性脳卒中患者の運動試行中に過剰な活動を報告している(1。今回、SMAは意図が存在する状態で活動を示した。FESキャリーオーバーは、FESと随意運動中にSMA活性化を示すが、AGとFV間の相互作用は示さなかった。キャリーオーバー効果は、動きの予測と身体の所有感によって生じる可能性がある。随意運動による感覚的な結果を予測することは、実際の感覚結果と比較される。随意的意図とFESと同期した運動を実行すると、運動は自己生成されたと認識される。その結果、患者は、長期増強効果を強化する可能性が高い(2。実際、随意的な努力と正常に完了した運動の知覚の組み合わせは、ヘッブの法則のような可塑性を促進する体性感覚フィードバックとなる。


【引用・参考文献】

1) Cramer S. C., Nelles G., Benson R. R., et al. A functional MRI study of subjects recovered from hemiparetic stroke. Stroke. 1997;28(12):2518–2527. doi: 10.1161/01.str.28.12.2518.

2) Wolpert D. M., Flanagan J. R. Motor prediction. Current Biology. 2001;11(18):R729–R732. doi: 10.1016/s0960-9822(01)00432-8.

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外側上顆炎に対する超音波療法と体外衝撃波療法の比較

Comparison of ultrasound and extracorporeal shock wave therapy in

lateral epicondylosis


Yalvaç B, Mesci N, Geler Külcü D, et al. Comparison of ultrasound and extracorporeal shock wave therapy in lateral epicondylosis. Acta Orthop Traumatol Turc. 2018 Sep;52(5):357-362. doi: 10.1016/j.aott.2018.06.004. Epub 2018 Jun 28.

PMID: 30497658; PMCID: PMC6204478.


No.2021-09

執筆担当:関西福祉科学大学 保健医療学部 リハビリテーション学科 梛野浩司

掲載:2021年4月13日


【論文の概要】

外側上顆炎(Lateral epicondaylosis: LE)は前腕伸展筋群と外側上顆の痛みを伴い、日常生活動作を制限する。LEに対する保存療法として、寒冷療法、体外衝撃波(extracorporeal shock wave thrapy: ESWT)、超音波(US)、レーザー針治療、マッサージ、運動療法、薬物療法などがある。

本研究の目的は、LEに対するUSとESWTの治療効果を比較することであった。対象はLEと診断され発症から3ヶ月以上経過した50名(年齢16-65歳)とし、無作為にUS群とESWT群に振り分けた。US群では周波数1MHz、出力1.5W/㎠にて連続波を1日5分、1週間に5日実施し合計10セッション行った。ESWT群では周波数10-15Hz、圧力密度1.5-2.5、2000パルスにて1週間に1度、合計3セッション行った。評価は治療開始時、終了後、終了1ヶ月後の3回行った。評価項目は痛みについてVASと圧痛閾値、筋力については握力、機能評価についてはThe disability of the arm, shoulder, and hand socre(DASH)とPatient-rated elbow evaluation(PRTEE)、そしてQOLの評価としてShort Form-36(SF-36)であった。

結果、US群およびESWT群ともに治療前後で比較するとVAS(両群ともp<0.0001)、疼痛閾値(両群とも p<0.0001)、握力(p=0.001 vs p=0.015)、圧痛閾値(両群とも p<0.0001)、PRTEE(両群とも p<0.0001)、QDASH(両群とも p<0.0001)、SF-36(p=0.001 vs p=0.005)と有意に改善した。また、治療前と治療終了1ヶ月を比較すると両群とも有意に改善しており治療効果が1ヶ月持続することが確認できた。2群間の比較では圧痛閾値のみESWT群が有意であり、それ以外は2群間で差がなかった。


【解説】

ESWTは非侵襲的な治療法であり、もともとは体外衝撃波結石破砕術からその物理理論を基礎に、難治性骨癒合や遷延性骨癒合に対する治療として開発された1,2)。衝撃破はまず生体内に入ると細胞骨格の付属物を活性化し、細胞核からのmRNAの放出につながる。これに続いてミトコンドリアや小胞体などの細胞器官と細胞小胞が活性化され、治癒過程を促進する。超音波についても同様のメカニズムが報告3,4)されているため、本研究におけるUS群とESWT群の治療効果に差がなかったことも納得である。しかし、USに比べESWTでは治療回数が少ないことを考えると臨床的有用性としては優れていると考えられる。


【引用・参考文献】

1. Valchanou VD, Michailov P. High energy shock waves in the treatment of delayed and nonunion of fractures. Int Orthop 1991;15:181–184.

2.  Schleberger R, Senge T. Non-invasive treatment of long-bone pseudarthrosis by shock waves (ESWL). Arch Orthop Trauma Surg 1992;111:224–227

3. Dyson M, Suckling J. Stimulation of tissue repair by ultrasound: A survey of the mechanism involved. Physiotherapy 1978; 64: 105-108.

4. Dyson M, Pond JB. The effect of pulsed ultrasound on tissue regeneration. Physiotherapy 1970; 64: 105-108.


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