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在宅神経筋電気刺激による足関節底屈筋力トレーニングは高齢者の姿勢安定限界を改善する

Antoine Langeard , Lucile Bigot , Gilles Loggia , Nathalie Chastan , Gaëlle Quarck , Antoine Gauthier . Plantar Flexor Strength Training With Home-Based Neuromuscular Electrical Stimulation Improves Limits of Postural Stability in Older Adults.J Phys Act Health. 2020 Jun 1;17(6):657-661.

PMID: 32432443 DOI: 10.1123/jpah.2019-0501


No.2021-07

執筆担当: 和歌山国際厚生学院 福井 直樹

掲載:2021年3月17日


【論文の概要】

60歳以上の高齢者は年間に平均1%安定性限界が低下することが報告されている。安定性限界が1cm減少することにより転倒のオッズ比を10%上昇させる。この減少は足関節の筋力に関連している。しかし、高齢者において足関節の底屈筋と背屈筋の訓練が安定性限界を拡大させるかについては知られていない。よって本研究は安定性限界に対して足関節底屈筋に対するNMESの効果を検証し、これらの効果が筋力の増加という形で計測可能かを検証する。対象は健常高齢者27名。評価は、股関節90度屈曲位で、3回の最大等尺性足関節底屈・背屈筋力を記録した。また、安定性限界を捉えることを目的としてフォースプレートに裸足で立ち、4方向(前後左右)の圧力中心の面積を計測した。NMESはパルス幅400μsの二相対称方形波を用い、刺激強度は、最大強度に設定し、順次サイクル数と周波数を増加させた(50Hz・42サイクルから70Hz・52サイクル)。結果、トレーニング前後で背屈筋35%、足底屈筋47%増加した。メディエーション分析では足底屈筋力に対してのみ有意なNMESトレーニング効果を示した。また、前方への安定性限界に対してのみ有意な効果があり、安定性の前方限界に対するNMESトレーニング効果は足底屈筋の筋力増強によって予測されると結論付けることができた。


【解説】

本研究は、足首の筋肉のNMESトレーニングが高齢者の安定限界を改善できることを示している。NMESによって足関節底屈筋力が向上したことは、他の研究と一致している。1)前方安定限界と足底屈筋力の関係はすでに報告があり、2)本研究では,NMESによって足関節底屈筋力を高めることで臨床的に安定限界を直接改善できることを明らかにした。今回の知見によって、転倒の危険性のある高齢者において、安定性の前方限界を維持することを考慮することができること、NMESトレーニングは安全で、利用しやすく、効果的な方法であることが明らかとなった。NMESは転倒予防プログラムでの有用性があると思われる。


【引用・参考文献】

1) Mani D, Almuklass AM, Amiridis IG, Enoka RM. Neuromuscular electrical stimulation can improve mobility in older adults but the time course varies across tasks: double-blind, randomized trial. Exp Gerontol. 2018;108:269–275.

2) Melzer I, Benjuya N, Kaplanski J, Alexander N. Association between ankle muscle strength and limit of stability in older adults. Age Ageing. 2009;38(1):119–123.

 
 
 

重症患者における筋萎縮に対するベルト型電極による骨格筋電気刺激の効果:無作為化比較試験

Kensuke Nakamura , Atsushi Kihata , Hiromu Naraba , Naoki Kanda , Yuji Takahashi , Tomohiro Sonoo , Hideki Hashimoto , Naoto Morimura . Efficacy of belt electrode skeletal muscle electrical stimulation on reducing the rate of muscle volume loss in critically ill patients: A randomized controlled trial.J Rehabil Med 2019; 51: 705-711.

PMID: 31544949 DOI: 10.2340/16501977-2594


No.2021-06

執筆担当:関西福祉科学大学 保健医療学部 リハビリテーション学科 梛野浩司

掲載:2021年3月11日


【論文の概要】

重篤なICU患者は重度の筋萎縮と筋機能の障害が生じる。これはICU関連筋力低下(ICU-AW)と呼ばれる。本研究はICUに入院した患者を対象にベルト型電極による骨格筋電気刺激(B-SES)による筋肉量への効果を検証した。ICUに入院した220名のうち基準を満たした94名を無作為にB-SES群とコントロール群に割り当てた。B-SESでは、通常リハビリテーションプログラム(可動域練習、モビライゼーションなど)に加えて、ベルト型電極を腰部、左右膝関節近位部、左右足関節近位部の計5箇所に巻き付け、周波数20Hz、パルス幅250μs、通電時間5秒、休止時間2秒にて電気刺激を1日1回20分間行った。コントロール群では通常リハビリテーションプログラムのみ行った。評価はCTにより大腿四頭筋筋量を測定しICU入院1日目と10日目とを比較した。その他、ICU入院期間、入院期間、人工呼吸器装着の有無、Barthel Indexを評価した。最終評価までを行うことができたのはB-SES群が21名、コントロール群17名であった。結果、両群共に筋のボリュームは有意に低下(p<0.0001)していたが、B-SES群の低下率はコントロール群より有意に少なかった(p=0.04)。退院時のBarthel IndexはB-SES群とコントロール群を比較した場合、階段昇降のみ有意な差を認めた(p=0.04)。B-SESによって血圧、不整脈などのイベントは生じなかった。


【解説】

ICU-AWの予防として数多くの研究がなされている。その中でも、栄養療法と早期リハビリテーションの組み合わせが有効であったとする報告がある1)。また、電気刺激による骨格筋量への影響についても複数の報告があるが、その効果については不明確である2-5)。

本研究ではベルト型電極を用いることで、単一筋だけでなく多くの筋群を刺激することが可能で、その結果、コントロール群に比べ筋量の減少率を抑えることができたことを示している。ただし、機能面での評価はBarthel Indexのみであることから筋機能の詳細な評価が行われていないことが気になるところである。また、本研究では副作用報告はなかったが、B-SESについての研究報告が少ないため臨床応用にはまだまだ慎重さが求められると思われる。


【引用・参考文献】

1) Kou K, Momosaki R, Miyazaki S, et al:Impact of Nutrition Therapy and Rehabilitation on Acute and Critical Illness:ASystematic Review. J UOEH 41: 303-315,2019

2) Gerovasili V, Stefanidis K, Vitzilaios K, et al. Electrical muscle stimulation preserves the muscle mass of critically ill patients: a randomized study. Crit Care. 13(5):R161. 2009

3) Meesen RL, Dendale P, Cuypers K, et al. Neuromuscular electrical stimulation as a possible means to prevent muscle tissue wasting in artificially ventilated and sedated patients in the intensive care unit: A pilot study. Neuromodulation. 13(4):315-20; 2010

4) Kho ME, Truong AD, Zanni JM,et al. Neuromuscular electrical stimulation in mechanically ventilated patients: a randomized, sham-controlled pilot trial with blinded outcome assessment. J Crit Care. 30(1):32-9, 2015

5) Poulsen JB, Møller K, Jensen CV, et al. Effect of transcutaneous electrical muscle stimulation on muscle volume in patients with septic shock. Crit Care Med. 39(3):456-61, 2011


 
 
 

化学療法誘発性末梢神経障害に対する無線型TENSの効果

Jennifer S. Gewandter , Jenna Chaudari , Chinazom Ibegbu , Rachel Kitt , Jennifer Serventi , Joy Burke , Eva Culakova , Noah Kolb , Kathleen A. Sluka , Mohamedtaki A. Tejani , and Nimish A. Mohile . Wireless transcutaneous electrical nerve stimulation device for chemotherapy-induced peripheral neuropathy: An open-label feasibility study.

PMID: 30151681 PMCID: PMC6393221 DOI: 10.1007/s00520-018-4424-6


No.2021-05

執筆担当: 和歌山国際厚生学院 福井 直樹

掲載:2021年3月10日


【論文の概要】

化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)は、神経毒性化学療法薬を投与されている患者の約68%に発症し、約30%の患者で化学療法終了後も少なくとも6ヵ月間持続すると言われている。CIPNは、一般的に灼熱感/電撃痛、疼痛、疼痛、けいれん、しびれなどの神経障害性症状の可変的な組み合わせとして発現し、バランス障害、転倒の増加、歩行障害、日常生活活動の制限、睡眠の質の低下、QOL低下などと関連している。現在、CIPNに対するゴールドスタンダードの治療法はない。CIPNの動物モデルでは、有害な感覚信号を伝達する後角ニューロンが有害な刺激に対する応答性の亢進を示し、中枢興奮性の亢進を示唆している。したがって、中枢興奮性を低下させ、中枢抑制を高める介入はCIPN症状を改善する可能性がある。経皮的電気刺激(TENS)は、一般的に痛みのコントロールに使用される安全で非薬物療法であり、安価な治療法である。ヒトの研究では、疼痛抑制時のTENSによるオピオイド受容体の活性化が確認されており、線維筋痛症患者ではTENSが中枢抑制を回復させることが示されている。本研究は、29名のCIPNに対する無線型TENSの実現可能性と予備的な有効性を検討した。結果、European Organisation for Research and Treatment of Cancer-CIPN2はベースラインから13%(p=0.004)改善した。Short Form McGill Pain Questionnaire-2は52%(p=0.002)改善し、神経障害性疼痛、間欠性疼痛、持続性疼痛の各サブスケールで最大の改善が認められた。痛み(38%、p=0.0001)、しびれ(30%、p=0.002)、しびれ(20%、p<0.0001)、けいれん(53%、p=0.005)の各症状については、NRS日誌のスコアでも改善が認められた。Utah Early Neuropathy Scor (UENS)は、有意な改善を示さなかったもののlarge fiber(Aβ:振動覚、触覚) 感覚サブスコアで48%改善した(p=0.04)。感覚閾値は16人中10人(63%p<0.0001)で改善し、無線型TENSを用いたTENSの実施可能性と有効性を示した。


【解説】

TENSによる疼痛とけいれんの平均改善率は40%以上で有望であると思われる。しびれの改善は小さかったが(20%)、薬理学的治療は一般的にしびれを改善しないため、患者にとって特に有益である可能性がある。1)TENS治療後のCIPNの改善は、以前の研究と一致している。2‐4)また、UENSが比較的短期間で確立したCIPNの変化を検出するのに有用な手段であることを示唆し、ほとんどの化学療法によって誘発される神経障害は主に感覚的なものである5)ことを考慮すれば、UENSはCIPNでの使用にも妥当性があると思われる。TENSは安全な非薬物療法であり、有効性が実証されれば、CIPN患者に有益な治療法の選択肢を提供することになる。


【引用・参考文献】

1) Hershman DL, Lacchetti C, Dworkin RH, Lavoie Smith EM, Bleeker J, Cavaletti G, Chauhan C, Gavin P, Lavino A, Lustberg MB, Paice J, Schneider B, Smith ML, Smith T, Terstriep S, Wagner-Johnston N, Bak K, Loprinzi CL (2014) Prevention and Management of Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy in Survivors of Adult Cancers: JCO 32:1941–1967.

2) Wong R, Major P, Sagar S (2016) Phase 2 Study of Acupuncture-Like Transcutaneous Nerve Stimulation for Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy. Integr Cancer Ther 15 (2):153–164.

3) Pachman DR, Weisbrod BL, Seisler DK, Barton DL, Fee-Schroeder KC, Smith TJ, Lachance DH, Liu H, Shelerud RA, Cheville AL, Loprinzi CL (2015) Pilot evaluation of Scrambler therapy for the treatment of chemotherapy-induced peripheral neuropathy. Supportive Care in Cancer 23 (4):943–951.

4) Smith TJ, Coyne PJ, Parker GL, Dodson P, Ramakrishnan V (2010) Pilot trial of a patient-specific cutaneous electrostimulation device (MC5-A Calmare(R)) for chemotherapy-induced peripheral neuropathy. JPSM 40 (6):883–891.

5) Argyriou AA, Kyritsis AP, Makatsoris T, Kalofonos HP (2014) Chemotherapy-induced peripheral neuropathy in adults: a comprehensive update of the literature. Cancer Manag Res 6:135–147.

 
 
 

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