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陣痛に対する経皮的末梢神経電気刺激療法の効果:無作為化比較試験

Evaluation of different doses of transcutaneous nerve stimulation for pain relief during labour: a randomized controlled trial.

Aníbal Báez-Suárez , Estela Martín-Castillo , Josué García-Andújar , José Ángel García-Hernández , María P Quintana-Montesdeoca , Juan Francisco Loro-Ferrer

Trials. 2018; 19: 652.

PMID: 30477529 PMCID: PMC6258317 DOI: 10.1186/s13063-018-3036-2


No.2022-01

執筆担当:長崎リハビリテーション学院 森 健次郎

掲載:2022年2月4日


【論文の概要】

陣痛は女性にとって最も強い痛みの一つであるため、疼痛を軽減させる目的でマッサージなどの非薬物療法が推奨されている。本研究は分娩中の経皮的末梢神経電気刺激(TENS)の効果および安全性を明らかにする目的で無作為化比較試験にて調査した。対象は分娩を控えた63名を周波数固定TENS群(n=21)、周波数変調TENS群(n=21)、Placebo-TENS群(n=21)にランダムに割り当てた。電流パラメーターは、周波数は周波数固定TENS群100Hz、周波数変調TENS群は80~100Hz、パルス時間350μsec、電流強度は最大許容量、電極貼付部位は第10胸髄-第1腰髄および第2仙髄-第4仙髄、陣痛活動期(子宮頚管拡張4㎝)から30分間とした。評価は陣痛活動期の開始時、10分後、30分後に疼痛の程度をVASで評価した。また、出産後24時間経過後、出産満足度の評価を実施した。結果、周波数固定と周波数変調との比較では差は見られなかった。Placebo-TENS群と比較して、周波数固定TENS群、周波数変調TENS群が鎮痛に有効であり、出産後の満足度も向上することが明らかとなった。


【解説】

 妊娠中の強い痛みは分娩時に胎児の頻脈、膣裂傷などの合併症のリスクを引き起こす1)とされている。陣痛に対するTENSの有効性と安全性を示すいくつかの研究2,3)があるが、具体的な刺激パラメーターについては不明確な点があった。本研究は対象に評価者など盲検化したランダム化比較試験にてTENSを実施している。結果、疼痛は軽減し、満足度も向上した。また、疼痛の臨床的意義のある最小の差を伴う改善を認めているのは周波数変調TENS群であったことから、周波数は変調モードで実施することが推奨されるが、周波数固定TENS群と周波数変調TENS群の比較では差を認めなかったため、さらなる検証が必要である。また、陣痛は解剖学的・生理学的要因だけでなく、社会的・環境的要因の影響をうけることも報告4)させていることから、明らかなTENSの効果なのかについては不透明な点はあるが、陣痛を軽減する介入方法として一考の価値があると思われる。


【引用・参考文献】

1) Brown A, Johnston R. Maternal experience of musculoskeletal pain during pregnancy and birth outcomes: significance of lower back and pelvic pain. Midwifery. 2013;29(12):1346–1351.

2) Bedwell C, Dowswell T, et al.:. The use of transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) for pain relief in labour: a review of the evidence. Midwifery. 2011;27(5):e141-e148.

3) Dowswell T, Bedwell C, et al.: Transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) for pain management in labour. Cochrane Database Syst Rev. 2009;(2):CD007214.

4) Lowe NK. The nature of labor pain. Am J Obstet Gynecol. 2006; 186: 16–24.

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化学放射線治療を受けた頭頚部がん患者の嚥下障害に対する神経筋電気刺激の効果


Impact of transcutaneous neuromuscular electrical stimulation on dysphagia in patients with head and neck cancer treated with definitive chemoradiation.

Head Neck. 2015. 37(7):1051-6.

PubMed PMID: 24710791


No.2021-28

執筆担当: 関西福祉科学大学 植村 弥希子

掲載:2021年12月27日


【論文の概要】

化学放射線治療の副作用の1つに嚥下障害がある。経皮的電気刺激療法は比較的新しい治療法であり、嚥下障害に対するリハビリテーションで使用されているが、頭頚部がん患者における効果検証は不十分である。今回、化学放射線治療を受けた頭頚部がん患者95名を対象に最低5mA、80Hz、300msecの電気刺激を前頸部へと45~60分間、週3回実施した。治療前後でFOIS (Functional Oral Intake Scale)、8-point Penetration-Aspiration Scale、Swallowing Performance Status Scaleを評価した。治療を10回受けた群、9回以下の群に分け、比較検討した。両群ともに化学放射線治療後に嚥下機能は悪化した。FOISは治療群の方が対照群に比べ、嚥下障害の低下は軽度であった(23% vs 7%, p=0.015)が、その他のスケールでは有意な差は認めなかった。化学放射線治療後の嚥下障害悪化の要因として、年齢、アフリカ系アメリカ人、喫煙、DM、癌ステージ4A、両側のリンパ節転移、加速分割照射、10ポンド(4.54kg)以上の体重減少、食生活の改善が必要な人、電気刺激介入なし、放射線治療量の増加が抽出された。本研究により電気刺激療法は化学放射線治療後の頭頚部がん患者の嚥下機能障害に対するリハビリテーションの補助的な治療法として有用である可能性が示唆された。


【解説】

回復期脳卒中患者の嚥下障害に対する電気刺激療法の治療効果は今までも検討されており、通常の嚥下訓練との併用効果については多数の臨床研究にてその有効性が報告されている1)。一方で頭頚部がん後の嚥下障害に関してはエビデンスが乏しく、中には電気刺激療法を行っても改善しないという報告もある2)。本研究においても電気刺激療法による著明な改善効果は認めず、治療効果は限局的であった。放射線治療後の嚥下障害は急性期と晩期に分けられ、急性期では粘膜炎や唾液分泌障害による疼痛、咽喉頭の浮腫、咽頭収縮や喉頭挙上の障害などにより嚥下障害が生じる3)。本研究では放射線治療後から電気刺激介入までの期間について述べられていないが、介入前評価を放射線治療2週間後に行ったと記載されているため、急性期の副作用が生じているものと思われる。このように放射線治療後の嚥下障害の病態メカニズムは脳卒中後の嚥下障害とは全く異なるため、同様の神経筋刺激では効果が得られなかったものと思われる。放射線治療後の嚥下障害に対する物理療法介入にはその病態に即した刺激条件を検討し、実施することが望ましいと思われる。


【引用・参考文献】

1) Alamer A., Melese H., Nigussie F. Effectiveness of Neuromuscular Electrical Stimulation on Post-Stroke Dysphagia: A Systematic Review of Randomized Controlled Trials. Clin Interv Aging. 2020;15:1521-31.

2) Costa DR., Santos PSS., Rubira CMF., Felix GB. Immediate effect of neuromuscular electrical stimulation on swallowing function in individuals after oral and oropharyngeal cancer therapy. SAGE Open Med. 2020;8: 2050312120974152.

3) 飯野, 岡野, 全田, 林, 化学放射線治療を受ける頭頚部癌患者へのリハビリテーション,日気食会報, 2018;69(2),154-7.

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末梢動脈疾患に対する温熱療法と運動療法の比較:12週間の無作為比較試験


Heat therapy vs. supervised exercise therapy for peripheral arterial disease: a 12-wk randomized, controlled trial

Ashley P Akerman , Kate N Thomas , Andre M van Rij , E Dianne Body , Mesfer Alfadhel , James D Cotter

Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2019 316: H1495-H1506

PMID: 31002283 DOI: 10.1152/ajpheart.00151.2019


No.2021-27

執筆担当: 関西福祉科学大学 植村 弥希子

掲載:2021年10月28日


【論文の概要】

末梢動脈疾患(PAD)は血管の狭窄、閉塞により生じ、進行すると四肢の切断に至る可能性もある。運動療法は治療手段の1つであるが、十分に運動が行えない患者も多い。足浴による温熱療法はPAD患者の歩行距離を改善するなど近年着目されているため、本研究では運動療法との効果を比較検討した。PAD患者を無作為に温熱群と運動群に分け、温熱群では週3~5日間の温熱療法を行った。約39度の温泉に剣状突起から肩の範囲で入浴し、入浴後15~30分後にバンドを用いた運動を行った(運動は週3回)。運動群では週2日間、30分間の歩行練習と最大60分以下で抵抗運動を行った。いずれの群も介入前と比べ6分間歩行の創歩行距離および間欠性跛行が出現するまでの距離(PFWD)は増加した。収縮期血圧は温熱群で有意に低下し、HRも上昇したが拡張期血圧および平均同脈圧に差は認めなかった。血液中のVEGF(血管内皮増殖因子)はいずれの群も介入後に上昇していた。また、QOLについて痛みの項目は温熱群で低下を認め、温熱群ではアドヒアランスも良好であった。


【解説】

PADは心血管障害のリスク因子であり、死亡のリスク因子であること、生命予後不良因子であることが報告されている1)。PADに対する足浴・全身浴により歩行時間が延長したという報告2)もあり、副作用が少なく治療の受け入れも良好であると注目されている。本研究では運動療法と温熱療法の比較としているが、温熱群でも運動は行われており純粋な温熱療法の効果とは言い難いが、温熱群では脱落者がいないことから温熱療法によって運動に対する受け入れも向上した可能性はある。PAD患者は足部の変形や胼胝が生じやすく、また、間欠性跛行があると歩行練習も十分に実施できないこともある。温熱療法と低負荷の運動療法の併用により運動耐容能が上昇するのであれば、今後の新たな治療戦略の1つとして用いられる可能性がある。一方で温熱療法後に血圧低下がみられる。循環動態の不安定な者では失神などのリスクも考慮する必要があるため、患者選択は十分に注意する必要があると思われる。


【引用・参考文献】

1) Ankle Brachial Index Collaboration. Ankle brachial index combined with Framingham Risk Score to predict cardiovascular events and mortality: a meta-analysis. JAMA,, 2008;300(2):197-208.

2) Monroe JC., Song Q., et al. Acute effects of leg heat therapy on walking performance and cardiovascular and inflammatory responses to exercise in patients with peripheral artery disease: Physiol Rep. 2021;8(24):e14650.

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