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創面および周辺皮膚の深部組織の超音波画像評価:画像による分類


Ultrasound assessment of deep tissue on the wound bed and periwound skin: A classification system using ultrasound images

J Tissue Viability. 2021 30:28-35.

PMID: 32859473 DOI: 10.1016/j.jtv.2020.08.002


No.2021-23

執筆担当: 関西福祉科学大学 植村 弥希子

掲載:2021年9月1日


【論文の概要】

Deep Tissue Pressure Injury (DPTI)とよばれる潰瘍を伴わず下層組織内で発生する褥瘡がある。早期発見のために超音波やサーモグラフィなどの診断装置が利用されている。超音波による画像診断は多数報告されているが、適応症例や評価システムは確立されていない。本研究では体幹に褥瘡のある11症例を対象に、5-18 MHzプローベ(皮膚表面から20-30 mmの描出可能)を用い、18 MHzにて実施した。5名にCloud-like pattern、4名に敷石様、2名に創構造の不明瞭化が認められた。Cloud-like patternを呈した患者は全員悪化したが、敷石様を呈した患者は悪化しなかった。また、敷石様を呈した患者のうち2名に創周囲の皮膚にも敷石様の変化を認めたため、創周囲の皮膚および創の連続的な観察によりこれら2つを区別することが可能となる。創構造の不明瞭化を示した創はいずれも2週間で治癒した。本研究の限界として患者数が少ないこと、在院期間が短くフォローアップができなかったことがあげられるが、超音波画像診断装置がDPTIの予後予測に用いられる可能性が示唆された。


【解説】

DPTIは軽度の褥瘡と判別しづらく予後不良であることも多い。皮膚欠損がないまま深部組織が傷害されるため、肉眼での判別は困難となる。超音波画像診断装置を用いた評価は行われており、筋層の連続性が断たれているものや不均一な低エコー領域があるものは悪化しやすいと報告されている1)。しかし、創周囲の皮膚と創部の違いや描出画像による予後の違いについて言及されている報告はない。本研究は描出画像による予後予測の可能性を示唆しており、超音波画像診断装置の有用性について明らかにしている。ただし、DPTIの治療法は確立されていないため、早期画像診断だけでなく適した治療方針についても今後明らかにされることを期待したい。


【引用・参考文献】

1) Aoi M., Yoshimura K., Kadono T., et al. Ultrasound assessment of deep tissue injury in pressure ulcers: possible prediction of pressure ulcer progression. Plast Reconstr Surg., 2009;124(2):540-550.

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脊髄損傷者の運動回復を促進する皮質運動ニューロン可塑性


Corticospinal-motor neuronal plasticity promotes exercise-mediated recovery in humans with spinal cord injury

Hang Jin Jo, Monica A. Perez

Brain. 2020 May 1;143(5):1368-1382.

doi: 10.1093/brain/awaa052. PMID: 32355959; PMCID: PMC7534104.


No.2021-21

執筆担当:関西福祉科学大学 保健医療学部 リハビリテーション学科 梛野浩司

掲載:2021年8月16日


【論文の概要】

 脊髄損傷後の機能回復には脊髄の可塑性を賦活し残存する随意筋群の能力を高めることが重要であり、そのためには主に運動療法が行われている。運動療法を通じて随意努力を行うことで神経ネットワークが賦活され脊髄損傷部位以遠の可塑性を引き起こし、機能性が向上することが認められている。また、随意努力に神経刺激を組み合わせることで機能向上を増大させることが示されていることから、大脳皮質の運動野を経頭蓋磁気刺激(TMS)を行い、刺激が脊髄の運動ニューロンに到達するタイミングで四肢末梢神経を刺激するという組み合わせ(paried corticospinal-motor neuronal stimulation; PCMS)がよりシナプス効率を高め機能向上を促進すると考えられている。

 そこで本論文では生活期の不全脊髄損傷患者を無作為に10セッションの運動療法とPCMSを組みわせた群(PCMS+運動群、n=13)とsham-PCMSを組み合わせた群(sham-PCMS+運動群、n=12)の2群に割り付け検証した。さらに検証するためにPCMSのみの群(PCMS群、n=13)も設けた。

 測定項目として、介入前後にmotor evoked potential; MEPとmaximal voluntary contraction; MVCを測定した。

 結果、PCMS+運動群およびPCMS群では有意にMEP振幅が増大していた。sham-PCMS+運動群では介入前後で有意な差はなかった。MVCにおいても同様の結果が得られた。これらの結果は、6ヶ月後のフォローアップの時点でも維持されていた。


【解説】

 繰り返し前シナプス電位と後シナプス電位が同期するとシナプス効率が向上する。このことからPCMSは脊髄シナプス可塑性を引き起こす方法で、皮質からの刺激と末梢からの刺激が同期することでNMDA受容体の活動性を高め、LTD様の変化を引き起こすものである1,2)。本論文ではPCMS後にMEPおよびMVCの向上を認めていることから脊髄内でのシナプス効率が向上し筋力の発揮に貢献していることが理解できる。しかし機能的な評価も行なっているが、残念ながらPCMS+運動群、PCMS群、sham群の間に有意な差を認めていない。このことについて、特に手指の巧緻性については皮質脊髄路以外の関与も大きく3)まだわからないことも多いため、単純な皮質脊髄路のシナプス効率の向上だけでは機能向上に繋がらないことを示唆している。

 今後もこの分野での研究が期待される。


【引用・参考文献】

1) Bunday KL, Perez MA. Motor recovery after spinal cord injury enhanced by strengthening corticospinal synaptic transmission. Curr Biol. 2012 Dec 18;22(24):2355-61. doi: 10.1016/j.cub.2012.10.046. Epub 2012 Nov 29. Erratum in: Curr Biol. 2013 Jan 7;23(1):94. PMID: 23200989; PMCID: PMC3742448.

2) Bunday KL, Urbin MA, Perez MA. Potentiating paired corticospinal-motoneuronal plasticity after spinal cord injury. Brain Stimul. 2018 Sep-Oct;11(5):1083-1092. doi: 10.1016/j.brs.2018.05.006. Epub 2018 May 9. PMID: 29848448.

3) Bunday KL, Tazoe T, Rothwell JC, Perez MA. Subcortical control of precision grip after human spinal cord injury. J Neurosci. 2014 May 21;34(21):7341-50. doi: 10.1523/JNEUROSCI.0390-14.2014. PMID: 24849366; PMCID: PMC4028504.


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糖尿病性足病変における低強度陰極刺激の血管新生効果:ランダム化比較試験


Mohammad Reza Asadi , Giti Torkaman , Mehdi Hedayati , Mohammad Reza Mohajeri-Tehrani , Mousa Ahmadi , Roghieh Fathi Gohardani . Angiogenic effects of low-intensity cathodal direct current on ischemic diabetic foot ulcers: A randomized controlled trial.

Dirabetes Res Clin Pract. 2017 127:147-155.

PMID: 28371685 DOI: 10.1016/j.diabres.2017.03.012


No.2021-21

執筆担当: 関西福祉科学大学 植村 弥希子

掲載:2021年8月2日


【論文の概要】

創傷治癒には血管新生が必要不可欠であり、VEGFやNO、HIF-1αなどのサイトカインにより調整される。糖尿病性の潰瘍ではこれらの因子が低下していることから、血管新生が阻害されている可能性がある。糖尿病性足病変(diabetic foot ulcer: DFU)に対する電気刺激が各種サイトカイン産生に与える影響を解析した。2cm2以上のDFUを有する2型糖尿病患者を対象に直流電流刺激(感覚閾値程度、1時間、3回/週)を4週間行った。陰極は創付近に設置し、陽極は陰極から20cm離れた部位に設置した。創面積および浸出液中のサイトカインとNOを測定した。VEGFおよびHIF-1α産生は電気刺激群で有意に増加したが、NOに差は認められなかった。また、電気刺激群の方が創治癒率は有意に高かった。電気刺激によりHIF-1α産生が上昇したことでVEGF発現が上昇、DFUの創治癒が促進された可能性がある。


【解説】

DFUは創感染や骨髄炎が生じると切断が必要となることもある。近位の切断患者の5年生存率は約50%という報告1)もあり、切断に至る前に治癒させなければならない。電気刺激は褥瘡などの難治性潰瘍の治療手段として用いられており、メタアナリシスでもその有効性は示されている2)。電気刺激の治療メカニズムについては線維芽細胞や表皮細胞を用いた実験で明らかにされてきてはいるが、滲出液中のサイトカイン産生についてはいまだ十分に論じられていない。本研究ではサイトカインの産生細胞までは不明であるが、DFUに対する電気刺激の治療効果解明の一助となるだろう。一方で、実際に血管新生が促進されているかどうかは臨床研究では解明できないため、今後動物実験などでの検証が必要になると思われる。


【引用・参考文献】

1) Ammendola M., Sacco R., Butrico L., et al. The care of transmetatarsal amputation in diabetic foot gangrene. Int Wound J., 2017;14(1):9-15.

2) Chen A., Chen ZY., Liu WH., et al. Electric Stimulation as an Effective Adjunctive Therapy for Diabetic Foot Ulcer: A Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Adv Skin Wound Care. 2020;33(11):608-612.

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