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黄色ブドウ球菌のバイオフィルムに対するヘマトポルフィリンモノメチルエーテル(HMME)を介した低周波・低強度超音波の透過効果


The penetration effect of HMME-mediated low-frequency and low-intensity ultrasound against the Staphylococcus aureus bacterial biofilm

Tao Wang , Wei Ma , Zhinan Jiang , Liangjia Bi

Eur J Med Res. 2020 25:51.

PMID: 33092628 PMCID: PMC7583205 DOI: 10.1186/s40001-020-00452-z


No.2021-25

執筆担当: 関西福祉科学大学 植村 弥希子

掲載:2021年10月4日


【論文の概要】

バイオフィルムは細胞外多糖(EPS)により抗生物質などの外的物質からの抵抗力が高まっており、薬剤による治療が困難である。高強度の超音波はESPを破壊し、バイオフィルムを除去することができる。位峰で低強度の超音波は薬剤と併用することで殺菌効果を増強させる。そこでバイオフィルムに対するヘマトポルフィリンモノメチルエーテル(HMME、光線力学療法に用いられる薬物)との併用効果を検証した。control、HMME単独投与、超音波(25kHz、0.5, 1, 1.5W/cm2、duty cycle 50%)との併用の3群にわけ検討した。結果、1.5W/cm2の超音波でバイオフィルムの破壊が確認された。また、0.5W/cm2と比べ1W/cm2の方が照射開始0.5分後よりHMMEの浸透作用が高かった。また、HMMEと超音波同時投与群ではHMMEの浸透率が高く、より高い濃度を投与できることが明らかになった。


【解説】

バイオフィルム前述した通り、抗生物質などの薬剤治療に抵抗性があり慢性潰瘍では治癒遷延化の一因としてあげられている。近年ではバイオフィルムを可視化させるキットも開発されているが、日本褥瘡学会褥瘡予防・管理ガイドライン1)でもバイオフィルムに対する外用薬は推奨度C1と推奨度は高くない。そこでバイオフィルムを物理的に除去する方法として超音波がフォーカスを浴びており、バイオフィルムの存在が疑われる褥瘡に対して超音波でブリードマンを行った結果、治癒が促進したという報告もある2)。本研究はデブリードマンによる破壊ではなく、超音波のキャビテーション効果を利用した薬剤導入によるバイオフィルムの破壊効果を検証しており、新たな知見が得られたといえる。今後、動物実験等での治癒効果の検証が必要であるが、安全で効果的な薬剤導入方法の確立が期待される。


【引用・参考文献】

1) 日本褥瘡学会、褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)、2015.

2) Mori Y., Nakagami G., Kitamura A, et al. Effectiveness of biofilm-based wound care system on wound healing in chronic wounds. Wound Repair Regen., 2019;27 (5):540-547.

 
 
 

亜急性期虚血性脳卒中患者における経皮的耳介迷走神経刺激による上肢運動機能回復への安全性と効果


Effect and Safety of Transcutaneous Auricular Vagus Nerve Stimulation on Recovery of Upper Limb Motor Function in Subacute Ischemic Stroke Patients: A Randomized Pilot Study

Dandong Wu , Jingxi Ma, Liping Zhang, Sanrong Wang , Botao Tan, Gongwei Jia

Neural Plast. 2020 Aug 1;2020:8841752.

doi: 10.1155/2020/8841752. PMID: 32802039; PMCID: PMC7416299.


No.2021-24

執筆担当:関西福祉科学大学 保健医療学部 リハビリテーション学科 梛野浩司

掲載:2021年9月29日


【論文の概要】

 迷走神経電気刺激は外科的に電極を埋め込み、迷走神経を刺激する介入方法で脳卒中後の上肢運動機能を高める効果があることが報告されている。この迷走神経電気刺激を経皮的に行う方法として、耳介に電極を貼付して迷走神経の耳介枝を介して刺激する方法がある。本研究では、亜急性期脳卒中片麻痺患者を対象に、プラセボ群と経皮的耳介迷走神経刺激(taVAS)群に無作為割付を行い、その効果を比較検討したものである。

 対象は初発虚血性脳卒中で、発症から0.5~3カ月で指示理解が可能な片麻痺患者とし、重篤な内部障害を有するものや安静時心拍数が60/分以下のものは除外した。taVASは左耳の耳甲介部に電極を貼付し、パラメータは周波数20Hz、パルス幅0.3msとし1日30分を15日間連続して実施した。プラセボ群は電極を貼付するが電気刺激は行わない状態を30分おこなった。両群ともに刺激後、従来のリハビリテーション介入を実施した。

 評価項目はFugl-Meyer上肢、Wolf motor function test(WMFT)、FIM、Brunnstrom stage上肢とし、ベースライン、介入後、介入4週後、介入12週後で評価を行った。

 結果は21人の患者が本研究に参加し、taVNS群10名、sham-taVNS群11名に割り付けた。両群間において年齢、性別、発症からの期間、麻痺側、収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、心拍数(HR)に有意な差はなかった。介入開始前に置いて両群間でFMA-U、WMFT、FIM、Brunnstrom scoreに有意な差はなかった。介入後において両群とも介入前と比較してBrnnstrom score以外全て有意に改善した。FMA-U、WMFT、FIMの改善はtaVNS群においてsham-taVNS群より有意に改善していた。

 長期効果について、両群ともベースラインよりもFMA-Uにおいて改善を維持しており、taVNS群やsham-taVNS群を比較すると有意な差が認められた。

 有害事象は全ての介入の中で1度だけ電極貼付部の皮膚が発赤する事象が確認されたが、6時間後には正常に戻っていた。

 HRについては介入前後および両群間で有意な差は認めなかった。DBPについても同様の結果であった。SBPについては介入前後*群間の交互作用が確認され、介入前後に主効果を認めた。しかし、SBPの変動は軽度なものであった。


【解説】

 迷路神経刺激は1980年代から報告がなされ、動物実験では脳梗塞領域の縮小、前足機能の向上などが報告されている1,2)。ヒトで初めて行われた研究では、脳梗塞患者に対してVNSとリハビリを組み合わせ、その効果を報告している。しかし、VNSでは副作用も多く、約半数において再度手術を要するなどが報告されている。その点、経皮的VNSは安全でコンプライアンスの高い介入方法で、有害事象はほとんどない。経皮的VNSには耳に電極を貼付して迷走神経耳介枝を刺激するtaVNSと迷走神経頸部枝を刺激するtcVNSがある。本論文では耳に電極をあて刺激するものであった。

 もともと迷走神経への電気刺激はてんかん発作の治療として確立されている3)。今回のように脳梗塞後の機能回復に応用されるのここ数年のことであり、まだまだ研究を必要とする分野である。

 今回の論文においてもサンプル数が少なく、十分なエビデンスの確立にはまだまだであり今後の研究が期待される。


【引用・参考文献】

1) I. Ay, R. Nasser, B. Simon, and H. Ay, “Transcutaneous cervical vagus nerve stimulation ameliorates acute ischemic injury in rats,” Brain Stimulation, vol. 9, no. 2, pp. 166–173, 2016.

2) I. Ay, J. Lu, H. Ay, and A. Gregory Sorensen, “Vagus nerve stimulation reduces infarct size in rat focal cerebral ischemia,” Neuroscience Letters, vol. 459, no. 3, pp. 147–151, 2009.

3) 原 恵子.迷走神経刺激のてんかんにおける適応.臨床神経生理学.43(4), 166-169, 2015.


 
 
 

創面および周辺皮膚の深部組織の超音波画像評価:画像による分類


Ultrasound assessment of deep tissue on the wound bed and periwound skin: A classification system using ultrasound images

J Tissue Viability. 2021 30:28-35.

PMID: 32859473 DOI: 10.1016/j.jtv.2020.08.002


No.2021-23

執筆担当: 関西福祉科学大学 植村 弥希子

掲載:2021年9月1日


【論文の概要】

Deep Tissue Pressure Injury (DPTI)とよばれる潰瘍を伴わず下層組織内で発生する褥瘡がある。早期発見のために超音波やサーモグラフィなどの診断装置が利用されている。超音波による画像診断は多数報告されているが、適応症例や評価システムは確立されていない。本研究では体幹に褥瘡のある11症例を対象に、5-18 MHzプローベ(皮膚表面から20-30 mmの描出可能)を用い、18 MHzにて実施した。5名にCloud-like pattern、4名に敷石様、2名に創構造の不明瞭化が認められた。Cloud-like patternを呈した患者は全員悪化したが、敷石様を呈した患者は悪化しなかった。また、敷石様を呈した患者のうち2名に創周囲の皮膚にも敷石様の変化を認めたため、創周囲の皮膚および創の連続的な観察によりこれら2つを区別することが可能となる。創構造の不明瞭化を示した創はいずれも2週間で治癒した。本研究の限界として患者数が少ないこと、在院期間が短くフォローアップができなかったことがあげられるが、超音波画像診断装置がDPTIの予後予測に用いられる可能性が示唆された。


【解説】

DPTIは軽度の褥瘡と判別しづらく予後不良であることも多い。皮膚欠損がないまま深部組織が傷害されるため、肉眼での判別は困難となる。超音波画像診断装置を用いた評価は行われており、筋層の連続性が断たれているものや不均一な低エコー領域があるものは悪化しやすいと報告されている1)。しかし、創周囲の皮膚と創部の違いや描出画像による予後の違いについて言及されている報告はない。本研究は描出画像による予後予測の可能性を示唆しており、超音波画像診断装置の有用性について明らかにしている。ただし、DPTIの治療法は確立されていないため、早期画像診断だけでなく適した治療方針についても今後明らかにされることを期待したい。


【引用・参考文献】

1) Aoi M., Yoshimura K., Kadono T., et al. Ultrasound assessment of deep tissue injury in pressure ulcers: possible prediction of pressure ulcer progression. Plast Reconstr Surg., 2009;124(2):540-550.

 
 
 

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