糖尿病性末梢神経障害患者の血清神経特異エノラーゼ(NSE)に対する光バイオモデュレーションの効果−パイロット研究−
Effect of photobiomodulation on serum neuron specific enolase (NSE) among patients with diabetic peripheral neuropathy e A pilot study
Anju M., Saleena Ummer V, Arun G. Maiya, Manjunath Hande, Binu V.S.
PMID: 32645648 DOI: 10.1016/j.dsx.2020.06.065
No.2021-20
執筆担当:関西福祉科学大学 保健医療学部 リハビリテーション学科 梛野浩司
掲載:2021年7月20日
【論文の概要】
糖尿病性末梢神経障害による神経原性疼痛に対してLow Level Laser Therapy: LLLTの効果が示されている1)。神経特異エラノーゼ(Neuron Specific Enolase: NSE)は神経ダメージの指標であり、健常者と比べ糖尿病性神経障害の患者では高度に上昇することが示されている。そこで、本研究では糖尿病性神経障害に対してLLLTを実施し、NSEの変化を確認することでLLLTの作用機序を明らかにすることを目的としている。
対象は、神経障害を有する2型糖尿病患者のうち条件を満たした50名であった。介入前にニューロパチーについてMichigan’s Neuropathic Screening Instrument: MNSI、振動覚閾値(VPT)、触覚について10gm Semmes Monofilament test、痛みについてはNumetric Pain Rating Score (NPRS)を実施し、NSEは血液検査にて確認した。
LLLTはECレーザー(波長632.8nm)とThorレーザー(波長660nmと850nm)を用い、全ての対象者は両方のLLLTを10日間受けた。
介入最終日である10日目にVPTとNPRSを測定し、ベースラインと差がなかったものに対してはさらなる分析を行わなかった。残った対象者に対しては介入開始後4週にVPT、MNSI、NPRS、血清NSEを測定した。
結果、LLLT介入後にVPT(p=0.003)およびNPRS(p=0.001)において有意に改善した。NSEについては、50名のうち42名において有意に低下していた(p=0.006)。 LLLTは神経再生に寄与している可能性が考えられる。
【解説】
神経特異エラノーゼは神経損傷直後に血液中な髄液中に放出されることが知られている。糖尿病性神経障害においてもNSEが増加することが示されている2)。本研究でLLLT介入後にNPRSとNSEの低下が認められ、糖尿病性神経因性疼痛による効果の一因としてLLLTが神経再生の一助を担っている可能性が示唆された。しかし、本研究はコントロール群を設定していないため、経時的な変化によるNSEの低下である可能性も否定できない。今後、臨床および基礎研究が期待される。
【引用・参考文献】
1) Anju M, Maiya AG, Hande M. Low level laser therapy for the patients with painful diabetic peripheral neuropathy-A systematic review. Diabetes Metabol Syndr Clin Res Rev 2019.
2) Li J, Zhang H, Xie M, Yan L, Chen J, Wang H. NSE, a potential biomarker, is closely connected to diabetic peripheral neuropathy. Diabetes Care. 2013 Nov;36(11):3405-10. doi: 10.2337/dc13-0590. Epub 2013 Jul 11. PMID: 23846809; PMCID: PMC3816869.
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