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COPD患者の軽度から中等度の増悪が神経筋電気刺激の結果に及ぼす影響

COPD患者の軽度から中等度の増悪が神経筋電気刺激の結果に及ぼす影響


Roy Meys , Maurice J Sillen , Frits M E Franssen , Anouk A F Stoffels , Emiel F M Wouters , Hieronymus W H van Hees , Bram van den Borst , Peter H Klijn , Martijn A Spruit . Impact of mild-to-moderate exacerbations on outcomes of neuromuscular electrical stimulation (NMES) in patients with COPD. Respir Med. 2020 Jan;161:105851.

PMID: 32056725 DOI: 10.1016/j.rmed.2019.105851


No.2021-04

執筆担当:岸和田リハビリテーション病院 嘉摩尻 伸

掲載:2021年3月9日


【論文の概要】

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の経過は急性増悪が特徴的である.呼吸リハビリテーションでは急性増悪後の転帰を改善させる可能性があるが,増悪症状の予防は困難である.急性増悪後は一般的に身体活動性の低下と大腿四頭筋の筋力低下を引き起こす.したがって呼吸リハビリテーション中に急性増悪を発症すると,その治療成績が悪化する可能性がある.本研究は重度COPD患者に対して,呼吸器系および心血管系に負担が少ない神経筋電気刺激(NMES)を用いてアドヒアランスと転帰に与える影響を調査した.

 対象はmMRC息切れスケール3-4,大腿四頭筋の筋力低下を呈した入院中のCOPD患者とし,80回のNMESを実施した(8週間,2回/日,5回/週).NMESは大腿四頭筋と下腿の筋に対して75Hz(HF群)または15Hz(LF群)に無作為に割り付けた.各セッションではパルス幅400μsec,on/off timeをそれぞれ8秒、刺激時間は18分間実施した.電流強度は個人の許容度に合わせて調整した.評価は体格測定(DXA-scan),肺機能検査,大腿四頭筋の筋力および持久力,6分間歩行距離,constant work rate cycle testとした.軽度から中等度の急性増悪とは『呼吸器症状の急性増悪で,追加の吸入薬の使用,抗生物質および全身性グルココルチコステロイド治療を必要とする』と定義した.患者は“増悪者”と“非増悪者”に分類された.

 解析対象はNMESプログラムを終了したCOPD患者62名とした(HF群:33名,LF群:29名).そのうち48.4%(30名)が急性増悪を経験していた.大腿四頭筋の筋力および筋持久力の増加は,LF群よりもHF群の方が大きかったが,これらの群内では増悪者と非増悪者の間に有意差は認められなかった.HF群の6分間歩行距離のみ増悪者(+30m)と非増悪者(+76m)の間で有意差(p=0.019)が認められた.

 本研究ではNMESトレーニング中に軽度から中等度の急性増悪を発症してもアドヒアランスや臨床転帰に影響を及ぼさないことが明らかとなった.


【解説】

 中等度から重度COPD患者におけるNMESの効果は骨格筋機能を改善させ,運動耐容能や生活の質を改善させることが報告されている1,2).COPD急性増悪中のNMESに関しては,2013年のATS/ERS Statementで適応可能であることが報告されていたが,サンプル数が少なく介入頻度も限られていた.本研究ではこれまでにないサンプル数でのCOPD急性増悪中におけるNMESの有効性を検証した最初の報告である.呼吸困難感を惹起させず,骨格筋機能を改善させるNMESは超高齢化社会である本邦においても有用である可能性が考えられる.


【参考文献】

Paulo J.C. Vieira, et al:Neuromuscular electrical stimulation improves clinical and physiological function in COPD patients. Respiratory Medicine 2014:108, 609e620.

rong-chang Chen, et al:Effectiveness of neuromuscular electrical stimulation for the rehabilitation of moderate-to-severe COPD : a meta-analysis. International Journal of COPD 2016:11 2965–2975.

Spruit, M.A., et al.,:An official American Thoracic Society/European Respiratory Society statement: key concepts and advances in pulmonary rehabilitation. Am J Respir Crit Care Med 2013.:188(8): p. e13-64.

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