筋力低下のある産後女性に対する電気刺激療法のプロトコルの効果(無作為化比較試験)
Effect of different electrical stimulation protocols for pelvic floor rehabilitation of postpartum women with extremely weak muscle strength: Randomized control trial.
Medicine (Baltimore). 2020 99(17): e19863.
PubMed PMID: 32332648
No.2021-19
執筆担当: 関西福祉科学大学 植村 弥希子
掲載:2021年7月1日
【論文の概要】
骨盤底筋群の機能低下(pelvic floor muscle disfunction; PFD)は神経因性膀胱などと関連し、女性のQOLを低下させる。骨盤底筋群トレーニングはPFD治療に有効だが、筋力低下が強い産後女性では十分に実施できず効果が得られにくい。経膣電気刺激療法とトレーニングの併用は骨盤底筋群の筋力強化に使用されるが、最適な条件は不明であるため、本研究では異なる条件での電気刺激療法の骨盤底筋群における効果について検証した。67名の産後女性を無作為に経膣電気刺激を5回行う群(A)、経膣電気刺激を3回、筋電誘発型機能的電気刺激を2回行う群(B)に分け、週2回、合計5回施行した。経膣電気刺激と筋電誘発型機能的電気刺激は二相性パルス、周波数50Hz、パルス幅250msec、on off比4:8、許容できる最大強度で25分間実施した。電気刺激後はKegel体操を5分間行った。骨盤底筋群の筋電図、筋力、PFDや尿失禁に関するアンケート調査を行った。結果、A群では32%、B群では18%の患者で筋力増強を認めた。アンケート調査では有意な改善を認めなかったが、A群では介入後に骨盤底筋群の正しい収縮の発生率が有意に上昇した。以上より、PFDに対しては骨盤底筋群のトレーニングには短時間の経膣電気刺激でも効果があることがわかった。
【解説】
出産により骨盤底筋群は機能低下を起こし尿失禁が生じることがある。Thomらのシステマティックレビューでは産後3か月間で尿失禁の経験がある女性は33%で、特に経膣分娩の場合、帝王切開と比べて尿失禁の発生率は約2倍と高いと報告されている1)。骨盤底筋群の機能低下により腹筋群と同時収縮が生じ、骨盤底筋群の適切な収縮、弛緩が困難となることが尿失禁の一因であるといわれている。その治療方法として女性下部尿路症状診療ガイドライン2)においても生活指導、理学療法(骨盤底筋訓練、バイオフィードバック訓練、電気刺激療法など)、膀胱訓練を組み合わせたプログラムは推奨グレードAとその効果は評価されている。一方で電気刺激療法の条件については一定の合意を得られておらず、本研究は経膣電気刺激療法単独の方が筋電誘発型電気刺激療法との併用より有効であったことは、新しい知見である。しかし、本研究ではいずれの群も電気刺激と運動を併用しており、電気刺激と運動の併用が運動単独より効果があったかは不明である。また、筋電誘発型電気刺激単独の効果も既報含め明らかでないため、今後は筋電誘発型電気刺激における効果検証も必要と思われる。
【引用・参考文献】
1) Thom DH, Rortveit G. Prevalence of postpartum urinary incontinence: a systematic review. Acta Obstet Gynecol Scand. 2010;89:1511-22.
2) 日本排尿機能学会、日本泌尿器科学会、日本女性骨盤医学会、女性下部尿路症状診療ガイドライン[第二版]、2019、リッチヒルメディカル
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