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The effects of electrical stimulation on diabetic ulcers of foot and lower limb: A systematic review.

Gianluca Melotto , Thanaporn Tunprasert , Jacqueline Rachel Forss

Int Wound J. 2022. 19(7):1911-33.

PMID: 35112496 PMCID: PMC9615295 DOI: 10.1111/iwj.13762


No.2023-04

執筆担当: 関西福祉科学大学 植村 弥希子

掲載:2023年3月8日


【論文の概要】

糖尿病性足病変(Diabetic Foot Ulcer: DFU)は糖尿病患者の1/3が罹患すると言われており、DFU患者の約3割が最終的に切断に至る可能性がある。QOLだけでなく医療経済的にも問題視されている。電気刺激療法は慢性潰瘍の治癒促進効果を有する非侵襲的な治療手段であることから、DFUに対する効果のシステマティックレビューを行った。計560本の論文から不適切な論文を除外し、最終的に7本の論文で解析した。3本は低強度の直流電流を、4本はパルス波を採用しており、その内1本は単相性のHVPCで残り3本は交流であった。3本の論文で電気群の治癒率は有意に高く、2本の論文で面積治癒率は有意に改善したが、治癒期間を比較した論文(1本)では差は認められなかった。電気刺激はDFUの治癒を促進させる可能性があるが、患者背景やサンプルサイズ、異なる刺激条件での比較などの問題があるため、今後は広範かつ包括的な研究が必要である。


【解説】

DFUは足部に発生することが多く、また、知覚障害を有するDM患者であればその発生リスクは高くなる。本文中にもある通り、本邦でもその潜在患者数が指摘されており2022年度の診療報酬改定において運動器リハビリテーションの算定が可能となった疾患である。慢性潰瘍に対する電気刺激療法の効果は褥瘡や下腿静脈潰瘍においてその治療効果が論じられており1),2、DFUを対象とした研究も増えてきている。今回、RCTおよびretrospective studyを対象としたシステマティックレビューが実施されたが、Limitationにも記載されている通り、刺激条件やDFU患者の日常生活指導などが統一されていない。DFU患者では免荷(off-loading)が日常生活において重要であり、電気刺激療法はあくまで補助療法であることに注意が必要である。治癒期間についても比較している研究は少なく、介入開始時の創の大きさや介入期間にも差があるため、本論文のデーターだけでは十分に議論ができない。今後は条件を統一した方法での他施設研究などが望まれる。


【引用・参考文献】

1) Kawasaki L., Mushahwar VK., Ho C., et al. The mechanisms and evidence of efficacy of electrical stimulation for healing of pressure ulcer: a systematic review. Wound Repair Regen. 2014;22(2):161-73.

2) Miller C., McGuiness W., Wilson S., et al. Venous leg ulcer healing with electric stimulation therapy: a pilot randomised controlled trial. J Wound Care. 2017;26(3):88-98.

 
 
 

Combined conventional speech therapy and functional electrical stimulation in acute stroke patients with dyphagia: a randomized controlled trial.

Matos KC, de Oliveira VF, de Oliveira PLC, Carvalho FA, de Mesquita MRM, da Silva Queiroz CG, Marques LM, Lima DLN, Carvalho FMM, Braga-Neto P.

BMC Neurol. 2022 Jun 22;22(1):231.

doi: 10.1186/s12883-022-02753-8. PMID: 35733098; PMCID: PMC9215026.


No.2023-03

執筆担当:岸和田リハビリテーション病院 嘉摩尻 伸

掲載:2023年3月6日


【論文の概要】

脳卒中は嚥下障害の主な原因であり脳卒中患者の50%が嚥下障害を有する1)と報告されている。嚥下障害は栄養失調、脱水、誤嚥などの重大な合併症を引き起こす2)。このような症例に対して、電気刺激が治療手段として用いられているが、その有効性は未だ明らかではない。本研究では、脳卒中後の嚥下障害患者を対象に、機能的電気刺激(FES)の効果をランダム化比較試験にて調査した。FESと従来の言語療法を組み合わせた介入群(IG)(n=16)とsham FESと従来の言語療法を実施した対照群(CG)(n=17)に分け20分/日の各介入を5日間実施した.主要評価項目はFunctional Oral Ingestion Scale(FOIS)および嚥下内視鏡検査(FEES)であった.嚥下障害の程度はFEESの手順に従い、機能的、軽度、中等度、重度の嚥下障害に分類してスコア化した。DREP(Dysphagia Risk Evaluation Protocol)は副次的評価項目とした。結果、介入5日後のFOISスコアに関して、各群で有意差が認められた。また、両群ともFEES法による嚥下障害レベルの改善傾向が見られたが、統計学的な有意差は認められなかった。経口栄養に関しては、両群とも改善がみられた。DREPスコアでは介入前後の群間における有意差は検出されなかった。これらのことから、電気刺激療法は、群間の転帰を比較した場合、従来の言語療法以上の効果を示さなかった。


【解説】

嚥下障害患者における舌骨上筋群に対する電気刺激療法は一戦略として確立されつつある3).本研究では,急性期脳卒中患者を対象とし,介入期間が5日間のRCTを紹介した.電極貼付部位は顎下腺と甲状軟骨上、舌骨上部に設置された.電気刺激のパラメーターは5つのステップを施行され,要約すると筋のウォーミングアップ,タイプⅠ線維筋力増強,タイプⅡ線維筋力増強,筋力トレーニング,リラックスに分けられた.従来の言語療法では舌の運動や嚥下反射の誘発を促す運動、三叉路の緩和、口腔内感度を促す運動4),Shaker exercise5),味覚療法6)などが施行された.結果は従来の言語療法に電気刺激療法を組み合わせても,従来の言語療法以上の効果を示さなかった.これは従来の言語療法が有効であることが示唆されている3, 7).また,本研究の電気刺激に関しては対象数が少なく,介入回数も少なかったことがこのような結果になった可能性がある.これらのことから,急性期から電気刺激療法と従来の言語療法を組み合わせ,より長期的な効果検証や最適なパラメーターを検討していく必要があると考える.


【引用・参考文献】

1) Smithard DG, Smeeton NC, Wolfe CDA. Long‐term outcome after stroke: does dysphagia matter? Age Ageing. Published online 2007. https://doi. org/10.1093/ageing/afl149.

2) Mendes FS, Tchakmakian LA. Quality of life and interdisciplinarity: the necessity of home care programs in the prevention of complications in old people with dysphagia. O mundo da saúde. 2009;33. https://doi.org/10.15343/0104‐7809.200933.3.8.

3) Alamer A, Melese H, Nigussie F. Effectiveness of neuromuscular electrical stimulation on post‐stroke dysphagia: A systematic review of randomized controlled trials. Clin Interv Aging. 2020;15:1521–31. https://doi.org/10. 2147/CIA.S262596.

4) Especialização em F, Vasconcelos Pereira NA, Rodrigues Motta A, Cristina Vicente LC. Reflexo Da Deglutição: Análise Sobre Eficiência de Diferentes Estímulos Em Jovens Sadios*** Swallowing Reflex: Analysis of the Effi‐ ciency of Different Stimuli on Healthy Young Individuals; 2008.

5) Choi JB, Shim SH, Yang JE, Kim HD, Lee DH, Park JS. Effects of Shaker exercise in stroke survivors with oropharyngeal dysphagia. NeuroRehabilitation. 2017;41(4):753–7. https://doi.org/10.3233/NRE‐172145.

6) Santoro P, e Silva IL, Cardoso F, Dias E, Beresford H. Evaluation of the effectiveness of a phonoaudiology program for the rehabilitation of dysphagia in the elderly. Archives of Gerontology and Geriatrics. 2011;53(1).

https:// doi.org/10.1016/j.archger.2010.10.026.

7) Nam HS, Beom J, Oh BM, Han T. Kinematic Effects of Hyolaryngeal Electrical Stimulation Therapy on Hyoid Excursion and Laryngeal Elevation. Dysphagia. 2013;28. https://doi.org/10.1007/s00455‐013‐9465‐x.

 
 
 

Immediate effect of mechanical lumbar traction in patients with chronic low back pain: A crossover, repeated measures, randomized controlled trial

Hideki Tanabe , Masami Akai , Tokuhide Doi , Sadao Arai , Keiji Fujino , Kunihiko Hayashi

J Orthop Sci. 2021 Nov;26(6):953-961.

PMID: 33785233 DOI: 10.1016/j.jos.2020.09.018


No.2023-01

執筆担当: 福井 直樹 和歌山リハビリテーション専門職大学

掲載:2023年2月28日


【論文の概要】

腰痛(LBP)の有病率は、政府の統計によると、健康問題の中で最も高い1)。LBPに対する機械的腰椎牽引は非特異的腰痛症に有効でないと結論づけている2)。しかし、腰部牽引は多くの国々でLBP患者に対する治療法として広く受け入れられ使用されている 3) 。本論文は、最近開発された牽引装置を用いて慢性腰痛(CLBP)に対する腰椎牽引の有効性を検討する多施設共同無作為化比較試験(RCT)を実施している。対象者は3 ヶ月以上持続する非特異的な CLBP で整形外科を受診した 20~64 歳の成人。介入プロトコルは間欠的牽引のみ(ITO)群と振動を伴う間欠的牽引(ITV)群の2群からなるクロスオーバーデザインを1週間設定した。介入に際し患者はA群(ITV→ITOの順)とB群(ITO→ITVの順)のいずれかに無作為に割り付けられた。ITVは10 分間のトラクションに振動機能を付加したもの。30秒間の牽引と5秒間の懸垂のサイクルを繰り返した。牽引の負荷は体重の40%とした。振動は周波数0.1Hz、振幅は負荷荷重の30%で付加した。ITOは30秒間の牽引と5秒間の懸垂のサイクルを繰り返しながら、10分間牽引した。牽引の負荷は体重の40%とした。評価タイミングは介入前、介入後の各期2 回ずつ測定した。痛みと生活の質(QOL)は日本腰痛評価質問票(JLEQ)で評価し、患者自身にJLEQの記入を依頼した。統計解析はJLEQスコアの経時的変化を反復測定用の一般化線形モデル(GLM)を用いて推定・分析した。統計解析は、SPSS ver. 23.0および SAS 9.4を用いた。結果、A群ITV→ITOに49名、B群ITO→ITVに46名が割付られた。ベースライン時のJLEQ得点の母集団平均値に関して、統計的に有意な差はなかった(p=0.998)。クロスオーバーの比較としてSAS の GLM 手法を用いて 1 期と 2 期間のキャリーオーバー効果を計算したが、計算結果は p = 0.527 であり、有意ではなかった。JLEQスコアの変化と2つの牽引モードの効果の違いについて線形混合モデルを用いて比較した。JLEQスコアの推定限界平均値の差は-1.75(p=0.001)であり、ITVモードはITOモードよりも有意に良好な改善効果を示した。両者の平均値の差の95%CIは-2.69から-0.80であった。


【解説】

JLEQスコアの経時的変化の差は、従来の牽引治療と比較して、振動力を追加した治療で有意な改善を示している。本論文は、CLBPに対する腰椎牽引の即効性を検討する多施設共同クロスオーバー無作為化臨床試験であった。その結果、振動を追加した腰部牽引は、従来の一定ストレッチによる腰部牽引よりも有効であることがJLEQにより示された。振動を加えた牽引力は、体性感覚入力系に強い刺激を与える可能性があると推測される。本論文は、ヒトにおける牽引療法の有効性を証明し、今後、振動の最も効果的な条件についてさらなる研究が期待される。


【引用・参考文献】

1). Statistics and Information Department, Minister's Secretariat, Ministry of Health, Labour, and Welfare:Graphical review of Japanese household, from comprehensive survey of living conditions.http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/20-21-h25.pdf (2013), Accessed 29th Jan 2020

2). A. Delitto, S.Z. George, L. van Dillen, J.M. Whitman, G.A. Sowa, P. Shekelle, T.R. Denninger, J.J. Godges:Low back pain - clinical practice guidelines linked to the international classification of functioning, disability, and health from the orthopaedic section of the American physical therapy association.J Orthop Sports Phys Ther, 42 (4) (2012 Apr), pp. A1-A57

3). T.J. Madson, J.H. Hollman:Lumbar traction for managing low back pain: a survey of physical therapists in the United States.J Orthop Sports Phys Ther, 45 (8) (2015 Aug), pp. 586-595

 
 
 

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