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N-of-1 Trial of Electrical Sensory Stimulation Therapy on the Tibial Innervated Area during Gait in a Case of Post-stroke Sensory Disturbance.

Yamaoka T, Takagi Y, Shimomura R, Murata Y, Shimotake K, Itoh A, Mima T, Koganemaru S. Prog Rehabil Med. 2023 Jun 22;8:20230018. doi: 10.2490/prm.20230018. PMID: 37351114; PMCID: PMC10281861.


No.2023-08

執筆担当: 岸和田リハビリテーション病院 嘉摩尻 伸

掲載:2023年11月8日


【論文の概要】

脳卒中患者の約50%に感覚障害がみられ1) ,運動麻痺がなくても日常生活動作(ADL)や社会参加が低下する2) .脳卒中後の感覚障害に対する治療法として,経皮的電気感覚神経刺激(TESS)が患側上肢の運動機能やADLの改善に有効であることが報告されている3)が,歩行障害に対するTESSの有効性は不明である.本研究では左大脳皮質下出血後に下肢の感覚障害を呈した患者において,歩行訓練とTESSの併用が歩行能力,表在感覚,バランス機能に及ぼす影響を検証した.症例は42歳の男性.左海綿体出血後4ヶ月が経過しており右上肢・下肢の感覚障害を認めた.ビデオ解析による歩行評価では,患側右下肢を振る際に右足関節背屈と股関節屈曲が過剰であった.また,右立脚相で体重を乗せることが困難となり,長距離歩行時で易疲労性を示した.そこで,足底の表在感覚をターゲットとした脛骨神経支配領域へのTESSと歩行訓練を併用することで,歩行時の足底への表在感覚入力を増強し,歩行機能を改善できるかをN-of-1試験デザインで検討した.介入プロトコールはA期(A1,A2):TESSを用いない歩行訓練を1日1セット,10分×2回(休憩1分),B期(B1,B2):足底感覚をターゲットとしたTESSを用いた歩行訓練,C期(コントロール):大腿外側部にTESSを用いた歩行訓練.TESSによる介入はA1 - B1 - C - A2 - B2の順で行われた.各期は7日間実施した.結果,足底感覚をターゲットとしたTESSと歩行トレーニングを併用した場合,大腿外側部をターゲットとしたTESSや歩行トレーニングを併用しない場合よりも,患者の歩行距離と歩幅が改善し,感覚障害が改善を示した.これは,足底感覚を対象とした歩行訓練とTESSの併用は,感覚認識に関連する高次認知領域に影響を与えたと考えられる.


【解説】

脳卒中後感感覚障害は,異常な内部モデルを形成し,高次の運動機能に影響を与え,誤ったフィードフォワードやフィードバック情報につながり4),日常生活動作や円滑な動作に多大なる影響を及ぼす.感覚障害へのリハビリテーションでは,受動的感覚トレーニング(電気刺激など)と,能動的感覚トレーニング(物品探索など)に分類される5).今回は脳卒中後感覚障害を呈した歩行障害に対する受動的感覚トレーニングTESSのN -of-1 Trialを紹介した.TESSは感覚閾値あるいは運動閾値の低強度を使用し,電気刺激がGABA抑制系の脱抑制を起こし脳の損傷側の運動領域が賦活されることが期待される.また,筋収縮が生じない程度の刺激強度のため運動療法と併用しやすいという特徴がある.本研究は足底感覚をターゲットとしたTESSと歩行訓練の併用により,歩行機能と足底の表在感覚が改善した.この治療法は,脳卒中後の感覚障害を有する患者に対する効果的な治療アプローチとしての可能性がある.治療法の有効性を調査するため,より多くの患者を対象にさらなる研究が必要である.


【引用・参考文献】

1) Zeman BD, Yiannikas C: Functional prognosis in stroke: use of somatosensory evoked potentials. J Neu- rol Neurosurg Psychiatry 1989;52:242–247.

2) CareyLM,MatyasTA,BaumC:Effectsofsomatosenso- ry impairment on participation after stroke. Am J Occup Ther 2018;72:7203205100p1–7203205100p10.

3) Schabrun SM, Hillier S: Evidence for the re- training of sensation after stroke: a system- atic review. Clin Rehabil 2009;23:27–39.

4) Frey SH, Fogassi L, Grafton S, Picard N, Rothwell JC, Schweighofer N:Neuro-logical principles and reha- bilitation of action disorders:computa-tion, anatomy, and physiology(CAP)model. Neurorehabilita-tion and neu-ral repair 25(5):6-20,2011.

Carlsson H, Rosén B, Pessah-Rasmussen H, Björkman A, Brogårdh C. SENSory re-learning of the UPPer limb after stroke (SENSUPP): study protocol for a pilot randomized controlled trial.Trials. 2018;19(1):229.

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Attenuation of hypertension by C-fiber stimulation of the human median nerve and the conceptbased novel device.Se Kyun Bang, Yeonhee Ryu, Suchan Chang, Chae Kwang Im, Jong Han Bae,Young Seob Gwak, Chae Ha Yang & Hee Young Kim. SCIENTIFIC REPORTS. September 2018. PMID: 30297735, PMCID: PMC6175881, DOI: 10.1038/s41598-018-33402-1


No.2023-07

執筆担当: 社会医療法人スミヤ角谷リハビリテーション病院 中前 匡揮

掲載:2023年9月15日


【論文の概要】

本研究の目的は、正中神経電気刺激(以下:TMNS)が高血圧を緩和するかどうかを調べることである。結果①刺激時間は60分で周波数は10Hzが最も疼痛などの違和感もなく降圧作用も良好。②TMNSは両側も片側も降圧作用に有意差はなかった。③電極貼付部位は手首の横の皺から6cm近位に陰極、陰極から4cm遠位に陽極を貼付した場合が最も安定して貼付しやすく降圧作用も良好であった。④尺骨神経よりも正中神経刺激の方が降圧作用は大きかった。⑤TMNSによる降圧作用はA線維ではなくC線維の活性化による影響が大きい可能性がある。⑥継続的にTMNSを使用することで、収縮期血圧、拡張期血圧、ともに低下を示したが、HRには低下がみられなかった。


【解説】

本論文はTMNSが血圧降下作用に及ぼす影響とその適切なプロトコールについて論述したものである。近年では脛骨粗面のやや外側部(鍼灸での足三里-ST36-と呼ばれる部位)への電気刺激が便秘症を改善させたと報告している論文がある1)。その他にも正中神経への運動閾値電気刺激は上腕動脈の血流量を減少させる(交感神経優位にさせる)2)といったものや、胸部(T1-T2)への低周波TENSが交感神経の変調(LF成分)を抑え、副交感神経の変調(HF成分)を高めるといった報告もある3)。つまり,自律神経機能の調節に関わるコントロールを電気刺激によって行うといった内容のものが散見されるようになってきているのである。臨床的には胸部への電気刺激よりも正中神経への電気刺激の方がより簡便であるため実用性が見込まれる。しかし実際にTMNSが副交感神経の変調(HF成分)を高めているかを述べた論文等はまだなく,そのような基礎研究が今後求められるであろう。


【引用・参考文献】

1) Zhaoxiu Liu, Yebo Ge, Feng Xu, Yuemei Xu,Yanmei Liu,Feizhen Xia,Lin Lin, and Jiande D. Z. Chen.Preventive effects of transcutaneous electrical acustimulation on ischemic stroke-induced constipation mediated via the autonomic pathway. Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol.2018

2) Omer Kazci, Fahrettin Ege. Evaluation of Sympathetic Vasomotor Activity of the Brachial Arteries Using Doppler Ultrasound. Med Sci Monit.2023

Sandra do Amaral Sartori,Cinara Stein,Christian Correa Coronel,Fabricio Edler Macagnan, Rodrigo Della Mea Plentz. Effects of Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation in Autonomic Nervous System of Hypertensive Patients: A Randomized Controlled Trial.2018

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Effectiveness and safety of electrical stimulation for treating pressure ulcers: A systematic review and meta-analysis.Lian Chen , Yue Ruan , Yuxia Ma , Long Ge , Lin Han . Int J Nurs Pract. 2023 Apr;29(2). PMID: 35244315 DOI: 10.1111/ijn.13041


No.2023-06

執筆担当:医療法人富田会 富田病院 木村 文彦

掲載:2023年5月31日


【論文の概要】

褥瘡の治療において電気刺激が臨床的に用いられることが多いが、その有効性や安全性、問題点などは明らかでない。そこで褥瘡治療における電気刺激の有効性と安全性に関する定性的なエビデンスを統合することを目的にシステマティックレビューを行った。結果、740人の患者を含む17のランダム化比較試験が本研究に含まれた。8つのランダム化比較試験のメタ分析では、電気刺激が標準的な創傷治療のみ、またはシャム刺激と対比して、潰瘍表面を有意に減少させることが示された。9つの研究では、電気刺激によって褥瘡が完全に治癒する可能性が対照群よりも高まることが示された。3つの研究では、副作用は希であったと報告されている。本研究により、電気刺激は褥瘡治療において比較的有効で安全な補助療法であることが示された。


【解説】

褥瘡は治療が困難であり、患者・家族のQOLを大きく低下させると報告されている1)。

電気刺激(ES)は褥瘡の治療に広く用いられているが、ESが有効であるかどうかのエビデンスはまだ十分ではない。本研究においては潰瘍表面を有意に減少されることが示されているが、他のシステマティックレビューによる9件のランダム化比較試験と非ランダム化比較試験においては電気刺激を使用した場合と標準的な創傷治療との間で褥瘡の完全治癒に有意差はなかったとの報告もされている2)。電気刺激は比較的安全に使用できることからも臨床場面において選択が容易であり、その治療効果が望まれる。創傷治癒を改善させるかどうかについてのエビデンスを明らかとするため、今後の研究では大規模な臨床試験にも焦点を当てる必要があると考える。


【引用・参考文献】

1)Mohit Arora , Lisa A Harvey , Joanne V Glinsky , Lianne Nier , Lucija Lavrencic , Annette Kifley , Ian D Cameron. Electrical stimulation for treating pressure ulcers. Cochrane Database Syst Rev. 2020 Jan 22;1(1):CD012196.doi: 10.1002/14651858.CD012196.pub2.

2)Health Quality Ontario. Electrical Stimulation for Pressure Injuries: A Health Technology Assessment. Ont Health Technol Assess Ser. 2017 Nov 8;17(14):1-106.eCollection 2017

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